II-P-43
乳児高安動脈炎によるmiddle aortic syndromeに対するステント治療の長期予後
神戸市立中央市民病院小児科1),大阪市立総合医療センター胸部外科2)
山川 勝1),冨田安彦1),宮本 覚2)

【背景】高安動脈炎(TA)は主として大動脈とその主要分枝を侵す血管炎である.上半身の高血圧を来す胸腹部大動脈の狭窄middle aortic syndrome(MAS)をしばしば合併する.インターベンションの報告も散見されるが 4 歳が最年少例である.【目的】乳児TAに合併したMASに対するステント治療例の長期予後検討.【症例】11カ月,女児.家族歴,既往歴に特記事項なし.入院 1 週間前から発熱,近医で呼吸窮迫,CRP高値,X線上心拡大を指摘され当科に紹介入院した.背部に雑音を聴取し,収縮期血圧は上/下肢125/75mmHgであった.血液検査では白血球数14,700/μl,CRP 10.9mg/dl,赤沈83mm/hrであった.エコー上左室の拡大と収縮能低下,心嚢液貯留,腹部大動脈血流加速を認めた.血管造影上第 9~11胸椎レベルで大動脈の狭窄を認め,最狭小部は直径約 2mm,狭窄部長約 3cm,圧較差約60mmHgであった.加えて左総頸動脈狭窄を認めたがその他の大動脈分枝,肺動脈には明らかな異常を認めなかった.抗生剤を投与したが反応は不良であった.米リウマチ学会および石川の診断基準のいずれにも合致し,TAと診断した.心不全は抗うっ血療法,炎症反応はプレドニゾロン 2mg/kgにより改善したが,薬剤抵抗性高血圧が遷延した.入院 1 カ月後全麻下に経皮的バルーン拡張,ステント(Palmaz径 7mm,長さ40mm)留置を施行した.術後上下肢の圧較差は消失し,高血圧は改善,退院した.術後 5 年 5 カ月のカテーテル検査で有意な圧較差を認めず,現在アスピリンのみで管理中である.【考按】MASに対するインターベンションの目標は狭窄解除および血管損傷,血栓形成などの合併症ならびに再狭窄の回避である.後負荷ミスマッチを伴う心不全例は緊急治療を要する.年少例では技術的制約を伴い,また成長による管径不適合も懸念される.自験例は 5 年間の追跡中良好な経過を得ている.【結語】ステント留置は年少児MASにおいて治療選択肢と成なり得る.

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