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エポプロステノール静注療法が術後肺高血圧に対して有効であった総肺静脈還流異常の乳児例
あかね会土谷総合病院小児科1),あかね会土谷総合病院心臓血管外科2)
小松弘明1),田原昌博1),脇 千明1),山田和紀2),望月高明2)

先天性心疾患に対する根治術後の肺高血圧残存に対しては長期にわたり高い酸素濃度での呼吸管理や一酸化窒素(NO)吸入療法を必要とすることがある.NO吸入療法では専用機材の必要性や中止後のリバウンドなどの問題がある.一方,静注用プロスタサイクリン(PGI2)は原発性肺高血圧症の治療薬であるが,小児の先天性心疾患や先天性横隔膜ヘルニアなど肺低形成を伴う新生児の根治術後の肺高血圧に対して有効であったとの報告がみられる.症候性PDA,低血圧,出血傾向などの副作用に注意を要するが特殊な機材を必要としない.今回,われわれは総肺静脈還流異常根治術後の肺高血圧に対してエポプロステノール静注療法を行い良好な経過を得た.エポプロステノール静注療法はNO吸入療法に代替する治療法として考慮してもよいと考えられた.症例は 2 カ月男児.在胎38週 1 日2,524gにて出生.生後 2 カ月時に体重増加不良とチアノーゼを指摘された.総肺静脈還流異常(下心臓型)と診断し直ちに根治術を施行した.術後の肺高血圧に対してニトログリセリン持続静注,アルプロスタジル(PGE1)持続静注,高濃度酸素による人工呼吸管理を行ったが効果不十分なためエポプロステノール静注療法を開始し計13日間投与した.8ng/kg/minで管理し漸減中止した.術後肺炎の合併もあり肺高血圧は遷延した.エポプロステノールによる副作用は特に認めなかった.右室圧は正常化し呼吸器から離脱,酸素投与も不要となり退院となった.

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