II-P-49
肺高血圧を伴う先天性心疾患に対する在宅酸素療法
岐阜県立岐阜病院小児循環器科1),岐阜県立岐阜病院小児心臓外科2)
桑原直樹1),後藤浩子1),坂口平馬1),桑原尚志1),渡辺成仁2),八島正文2),竹内敬昌2)

【背景】肺血流増加型先天性心疾患では,早期より肺血管抵抗(Rp)が上昇し手術不適応となる症例がある.近年,このような患者に対し術前や術後に在宅酸素療法(HOT)を行い肺高血圧の改善が図られている.【目的および対象】2000年以降肺高血圧合併先天性心疾患に対し在宅酸素療法を施行した 8 例について,臨床経過,効果,予後について検討した.【結果】8 例の内訳はAVSD 4 例,VSD 1 例,VSD + AS 1 例,TGA 2 例で,Down症候群を 5 例に認めた.心内修復術前からのHOT開始が 3 例(2 例に肺動脈絞扼術施行),術後開始が 5 例であった.HOT開始年齢は 2~49カ月(中央値11.5カ月),HOT期間は 3~39カ月(中央値18.3カ月)であった.HOT離脱可能となったのは 8 例中 4 例(全例術後),死亡 1 例(術前 1 例),継続中 3 例(術後 2 例,心内修復術待機 1 例)であった.同時期の非肺高血圧在宅酸素療法施行患者は12例あり,離脱可能 6 例,継続中 4 例,死亡 2 例であった.併用薬剤はベラプロスト 7 例,利尿剤 5 例,ACE阻害剤 1 例,強心剤 2 例,ニトログリセリン 2 例であった.HOT前後に心臓カテーテル検査を施行した 5 例(2 例は肺動脈絞扼術施行後,3 例は心内修復術後)のPA平均圧は35.3 ± 10.5mmHgから24.4 ± 11.9mmHgに,Rpは7.8 ± 2.1Um2から5.7 ± 3.0Um2に,Pp/Psは0.7 ± 0.25から0.49 ± 0.3に改善していた.【結語】早期より肺高血圧を伴う先天性心疾患患者,特にDown症候群合併例に対しHOTを施行することにより,肺高血圧が改善し心内修復術可能となる症例がある.HOT施行にもかかわらず先天性心疾患への手術介入ができない症例は,HOTからの離脱が困難であり予後も不良である.

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