II-P-50
術後高度肺高血圧により一酸化窒素離脱困難となった乳児に対する治療の試み
国立循環器病センター小児科1),国立循環器病センター心臓血管外科2)
羽二生尚訓1),林  環1),矢崎 諭1),山田 修1),越後茂之1),鍵崎康治2),八木原俊克2)

【背景】近年肺高血圧(PH)に対する治療はPGI2製剤の内服や持続静注,エンドセリン受容体拮抗薬(ERA),PDE-5 阻害薬,一酸化窒素(NO)吸入療法などの進歩と多様化がみられる.今回,われわれは術後PHクリーゼを繰り返し,NO療法が著効したものの,NO離脱が困難となった症例を経験した.【症例】10カ月男児.4 カ月健診で心雑音と体重増加不良(-1.5SD)を指摘され,近隣大学医学部附属病院受診.大動脈縮窄,心室中隔欠損,重度PHと診断され,当センターに紹介され入院.入院時の心エコーでは等圧の肺高血圧がみられた.一期的心内修復術を施行.術後も心エコー図上両心室圧はほぼ等圧と推測され,高度のPHの残存が認められた.術後 1 カ月時に突如急激な心拍数の上昇が出現.心エコー図上,右心室圧が左心室圧を上回る所見が得られPHクリーゼと判断.その後も同様のエピソードがみられNO療法を開始したところ状態は改善した.その後PGI2製剤持続静注,ERA内服を行ったにもかかわらず,術後約 2 カ月の時点で行った心臓カテーテル検査では,NO投与下では肺動脈収縮期圧35mmHg(平均圧19mmHg)であったのに対し,NO吸入を中止したところ直ちに肺動脈圧が大動脈圧を超えた.NO離脱に向け同様にc-GMP濃度を上昇させると考えられるPDE-5 阻害剤の内服を開始した.開始後はNO供給が一時的に止まってもPHクリーゼはみられない.【考察】NO反応性であるPHに対しPDE-5 阻害薬によるc-GMP濃度上昇の置き換えが期待される.

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