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肺動脈弁狭窄の治療後に,肺動脈性肺高血圧を発症した 2 例
東京慈恵会医科大学小児科1),埼玉県立小児医療センター循環器科2)
河内貞貴1),高木 健1),安藤達也1),寺野和宏1),藤原優子1),衞藤義勝1),齋藤亮太2),菱谷 隆2),星野健司2),小川 潔2)

【はじめに】乳児期早期に肺動脈弁狭窄に対し,経皮的バルーン肺動脈弁形成術を施行し,術後に肺動脈性肺高血圧を発症した 2 例を経験した.肺動脈弁狭窄に,原発性肺高血圧類似の病態を示す症例報告は少なく,比較的まれな症例であると考え報告する.【症例 1】7 歳女児.38週 1 日,2,654gにて出生.出生後心雑音を指摘され心エコー検査にて肺動脈弁狭窄と診断された.3 カ月時に,経皮的バルーン肺動脈弁形成術を施行し,圧較差は50mmHgから10mmHgへと改善したが,肺動脈弁逆流が進行したため,10カ月時に右室流出路形成術を施行した.その後の心臓カテーテル検査にて高肺血管抵抗性肺高血圧を認めた.他施設に 2nd opinionを求めたが,同様に原発性の肺動脈性肺高血圧との診断であった.経過中,肺高血圧は徐々に悪化し,現在prostacyclin持続静脈内注入療法中である.【症例 2】1 歳女児.37週 1 日,2,344gにて出生.出生後心雑音を聴取され,心エコー検査にて肺動脈弁狭窄と診断された.体重増加を待っていたが,2 カ月時に心嚢水貯留などの心不全進行したため,経皮的バルーン肺動脈弁形成術を施行し,圧較差は80mmHgから10mmHgへ改善した.しかし,その後の心臓カテーテル検査(治療 8 カ月後)にて,高肺血管抵抗性肺高血圧を認めたためbosentanの内服治療を開始した.腹部エコー上門脈系にも異常はなく,続発性とは考えられなかった.【結語】われわれは,肺動脈弁狭窄の解除後に発症した,肺動脈性肺高血圧の 2 例を経験した.肺血管抵抗増大の原因は不明であり,原発性の肺動脈性肺高血圧と診断した.われわれが検索した限りではこのような報告は少なく,比較的まれと思われた.これら 2 症例は,肺動脈弁狭窄に肺動脈性肺高血圧を合併する可能性を示唆するものと考えられ,狭窄解除後も厳重な経過観察が必要と考えられた.

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