II-P-53
肺高血圧クリーゼにて手術死したTCPCの 2 症例
榊原記念病院小児科1),榊原記念病院心臓血管外科2),日本肺血管研究所3)
畠井芳穂1),西山光則1),嘉川忠博1),佐藤裕幸1),朴 仁三1),森 克彦1),村上保夫1),高橋幸宏2),八巻重雄3)

【症例 1】SLV,CAVV,PSの 4 歳女児.2 カ月時に左短絡術(人工血管3.5mm径),2 歳11カ月でbidirectional Glenn手術施行.3 歳10カ月の心カテはPA 18/13(16)mmHg,PA index 327,心収縮正常,AVVRなし.4 歳 1 カ月で心外導管によるTCPCを施行したが,術後LOSのため 6PODにfenestration(8mm径graft clipping)追加も,血行動態が安定せず敗血症,腎不全,呼吸不全のため36PODに死亡した.剖検時の肺病理所見は,内膜病変や血栓はみられなかったが,preacinar arteryの肺小動脈中膜肥厚の退縮が不十分であった.【症例 2】unbalanced AVSD,DORV,sub AS,CoA,PDA,ダウン症候群の 2 歳 5 カ月男児.生後49日にNorwood型手術(EAA + DKS,RV-PA conduit)1 歳 6 カ月にbidirectional Glenn施行.2 歳 5 カ月の心カテはPA 12/11(8)mmHg,PA index 305,Ao 80%.側副血管に対しコイル塞栓後,TCPCを施行し同日抜管した.6PODにDOA中止,14PODに病棟帰室し経口摂取していたが,16PODより機嫌不良,末梢循環不全から突然呼吸停止となり,蘇生するも反応せず死亡した.剖検の肺病理はintraacinar arteryの肺小動脈中膜肥厚は退縮していたがpreacinar arteryでは半分以上に高度中膜肥厚を認めた.内膜病変もありIPVD 1.7,HE 3 度,肺静脈の中膜肥厚もあった.【考察】いずれの症例も術前のフォンタン適応基準は低リスクであり,肺動脈の条件には問題なかったが肺高血圧クリーゼにより死亡した.肺小動脈の中膜肥厚の退縮が不十分であったためvasoconstrictionを来したと考えられる.【結語】肺高血圧クリーゼにて死亡したTCPCの 2 症例を報告した.術前での肺動脈条件のスクリーニングは,現状では肺生検以外には困難である.

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