II-P-54
乳児期に片側の肺血管抵抗の上昇を来した先天性心疾患の検討
北海道大学大学院医学研究科小児科学分野
上野倫彦,山澤弘州,八鍬 聡,武田充人,村上智明

【背景】先天性心疾患に肺高血圧(PH)を伴う場合があり,時に治療・管理に難渋する.【症例 1】40週2,910gで出生.生直後よりチアノーゼが出現し完全大血管転位(dTGA)(I)の診断でプロスタグランジンE1製剤(lipo PGE1)を持続静注しながら当科に転院.dTGA(II)の診断となりlipo PGE1を中止したが肺血流は多く20生日に大血管転換手術を行った.6 カ月後左肺血流の低下を指摘(肺血流シンチ;右:左 = 65:35)され,左肺動脈狭窄を疑い心臓カテーテル検査(心カテ)を施行したところ,左肺動脈は著明なPH(Rp 右:左 = 1:6.4)であり,また右肺動脈に狭窄を認め〔主肺動脈圧(mmHg)82/11(44),右肺動脈27/13(18),左肺動脈70/16(40)〕,右室収縮期圧は89mmHgであった.右室の減圧を目的に右肺動脈形成術を準緊急に施行した.術後肺血流シンチで右:左 = 82:18であった.10カ月後心カテ施行時の肺血流比は66:34であり,Rpは右:左 = 1:3.7であった.その後再び左肺血流の割合が右:左 = 82:18と低下し心カテ施行,左肺動脈狭窄の診断でバルーン拡大術を行った.4 歳 9 カ月時の肺血流シンチで右:左 = 58:42,Rpは 1:1(各2.2U.m2),右室収縮期圧38mmHgであった.【症例 2】31週1,370g品胎第 3 子として出生.ファロー四徴症,肺動脈閉鎖と診断された.lipo PGE1を持続静注しつつ体重増加を待ち,7 カ月時に心カテを行ったところ造影上左肺動脈に明らかな狭窄はないものの著しく左肺血管床が減少していた.左Blalock-Taussigシャントを施行したが,1 歳 2 カ月時の心カテでやはり左の肺血管床は少なかった.1 歳 6 カ月時に心内修復術を施行,術直後の肺血流シンチでは右:左 = 74:26であった.その後肺血流の左右不均衡は改善傾向となり 5 歳時にはRpは左右差なく(右:左 = 1.7:1.5),肺血流シンチでも53:47と正常化していた.【まとめ】乳児期に左肺動脈のRp上昇・肺血管床の低下を来した 2 例を経験した.いずれも心内修復術を経て無投薬で管理したが 4~5 歳時には自然に軽快した.

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