II-P-55
二次性肺高血圧の血行動態分析―動脈管開存および心室中隔欠損について―
東京大学医学部小児科
中村嘉宏,小野 博,杉村洋子,林 泰祐,渋谷和彦,賀藤 均

【背景】乳児における心室中隔欠損(VSD)や動脈管開存(PDA)は,肺高血圧の血行動態を合併する例が多い.左右短絡による二次性肺高血圧は,肺血流増加と左室圧伝達との 2 つの要因が介在すると考えられる.以前われわれは,動脈管開存,心室中隔欠損の血行動態において,短絡路抵抗値(Rd)を疾患のタイプ別に定量化し,短絡路と肺動脈との位置関係が肺高血圧の進行に有意差を生じないとの結果を報告した.【目的】今回,われわれは,短絡路抵抗の定量化にあたってより正確に短絡時間を含めて評価し,改めて検討した.【対象】当施設で施行された乳児の術前心臓カテーテル検査結果,動脈管開存(PDA)12例,肺動脈弁下心室中隔欠損(VSD 1)14例,膜様心室中隔欠損(VSD 2)65例を用いた.【方法】前回,心室中隔欠損の短絡路抵抗定量に短絡時間を適用していなかったが,今回,心室圧曲線の面積比を利用し短絡時間を近似して求めた.血行動態パラメータ(sPAP/sLVP,Rp/Rs,Qp/Qs,Rd/Rs,Rp/Rd)についてグループ間でWelch検定を行った.【結果】PDAとVSD 1 とではRp/Rsに関して有意差を認めた(0.27 ± 0.15 vs 0.16 ± 0.09,p < 0.05).VSD 1 とVSD 2 間ではRp/Rs(0.16 ± 0.09 vs 0.23 ± 0.17,p < 0.05)およびRp/Rd(0.72 ± 1.10 vs 5.43 ± 17.45,p < 0.05)で有意差を認めた.【考察】PDAでは短絡の距離が近いこと,VSD 2 では圧伝達の絶対値が大きいことがVSD 1 に比較して肺血管抵抗の上昇に寄与すると分析された.

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