II-P-56
高度の肺高血圧を伴う未手術ダウン症年長者についての検討
長崎大学医学部小児科
本村秀樹,山本浩一,森内浩幸

近年,先天性心疾患を持つダウン症の予後は心臓手術の発展により飛躍的に改善された.しかしながら,一部にはEisenmenger化し未手術のまま成人に達した症例も少なからず存在し,さまざまな理由で内科へ移行していない症例もある.このような症例の臨床上の特徴,問題点について検討した.対象は当院外来でフォローアップしている未手術で18歳に達した高度の肺高血圧を伴うダウン症 7 名である.男性 2 人,女性 5 人,年齢は24.9 ± 7.5歳,疾患はVSD 5 名,ASD 1 名,PDA 1 名である.そのうちの 1 例は赤白血病の既往があった.喀血があった症例は 5 名,在宅酸素療法施行中は 3 名,痛風発作を生じたのは 1 名で糖尿病の合併もあった.また,齲歯の既往はあったが,感染性心内膜炎を起こした症例はなかった.身体所見では身長140.6 ± 6.3cm,体重45.7 ± 9.0kg,心拍数72 ± 6bpm,収縮期血圧88 ± 10mmHg,拡張期血圧62 ± 8mmHg,SpO2 89 ± 8%であった.胸部X線でのCTR 53.7 ± 5.3%,血液検査ではPlt 16.3 ± 6.1 × 104μ/l,RBC 553 ± 90.3 × 104μ/l,Hb 18.5 ± 2.7g/dl,MCV 91.7 ± 2.7fl,PTINR 1.0 ± 0.1,APTT 30.0 ± 3.0sec,BUN 19.8 ± 6.2mg/dl,Cr 0.9 ± 0.4mg/dl,UA 6.1 ± 2.1mg/dl,T-Cho 196 ± 62mg/dlであった.全例で低身長を認めたが高血圧はなかった.喀血は10歳代の 2 例を除くとすべてにあり,複数回に認めることが多かった.血液検査では多血症があり小球性赤血球は 1 名認め,凝固時間は全例でほぼ正常値であった.肥満度,コレステロール,中性脂肪は 2 極化する傾向がみられた.腎機能の低下を認めた症例は 1 名で糖尿病を合併していた.結論は20歳代以降はすべて喀血しており,注意すべき合併症と考えられた.加齢とともにチアノーゼに起因する合併症ならびにダウン症特有の合併症の頻度が増加してくると思われ,総合的な経過観察が必要であると思われた.

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