II-P-59
上大静脈ステントの評価―電子ビームCTの有用性―
国立循環器病センター小児科1),国立循環器病センター放射線科2)
小林奈歩1),南 憲明1),羽二生尚訓1),北野正尚1),矢崎 諭1),黒嵜健一1),内藤博昭2),越後茂之1)

【背景と目的】小児循環器領域において,術後上大静脈狭窄に対してはステント留置が有力な治療法となっている.しかしステント留置後の再狭窄や周囲組織圧迫などの評価は,単純X線撮影や心エコーでは困難であり,心臓カテーテル検査は侵襲度が高い.今回,電子ビームCT(EBT)による評価を行ったので報告する.【対象と方法】先天性心疾患術後の上大静脈狭窄に対しステント留置術を施行し,EBTを用いてステントを評価した 3 症例を対象とした.EBTはImatron C-150を用い,単純像,造影早期像,造影後期像を撮像した.スライス幅は 2~6mmに設定し,心電図同期を用いた.うち 2 例は同時期に施行した心臓カテーテル検査所見と比較検討した.【結果】すべての症例でステント形態,内腔の開存性,周囲組織との位置関係描出が可能であった.〈症例 1〉27歳男児;心房中隔欠損,部分肺静脈還流異常,Williams手術後;ステント内腔の卵円状の変形はみられるが血栓や内膜肥厚所見,周囲への圧迫はみられなかった.ステント前のEBT評価と比較して,SVC内腔は明らかに拡大した.〈症例 2〉13歳男児;心房中隔欠損,部分肺静脈還流異常,Williams手術後;ステント内側が窪むように扁平化するが径は保たれ,ステント内狭窄や内膜肥厚はみられず,心カテ所見と一致する結果であった.〈症例 3〉15歳女児;修正大血管転位,心室中隔欠損,肺動脈閉鎖,ダブルスイッチ術後;ステントの変形はなく,内膜肥厚や内腔狭窄もなかった.ステントにより右肺動脈の軽度圧排狭窄がみられたが,心カテでは圧較差 5mmHgであった.【考察】EBTによる上大静脈ステント評価は,形態,開存性ともに心カテ所見とよく合致しており,その有用性が示された.シネモードでは心周期に応じた大動脈,肺静脈等への圧排評価も可能であった.注意点:造影早期像ではステント内血管腔の造影剤濃度が均一でないため,単純像,造影後期像との比較検討が重要である.

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