II-P-61
大動脈拡張により著明な気管狭窄を来した単心室・肺動脈閉鎖の 1 例
豊橋市民病院小児科1),豊橋市民病院心臓血管外科2)
野村孝泰1),安田和志1),牧野泰子1),村山弘臣2),渡邊 孝2)

【はじめに】マルチスライスCTおよびその三次元構築により,心外血管の形態・走行・相互の位置関係の客観的な理解が可能になった.血管病変のみならず,気道病変の診断・治療後評価に有用であった 1 例を報告する.【症例】日齢 1 にチアノーゼを主訴に当院へ搬送入院となった男児.単心室・肺動脈閉鎖・内臓逆位の診断でPGE1を投与,日齢28に左modified Blalock-Taussig shunt術を施行した.その後の外来フォローアップにて,徐々にチアノーゼ(SpO2 63%)の進行と吸気性喘鳴を認め,シャント閉塞,肺動脈縮窄,上気道狭窄が疑われた.造影CTでは,肺動脈縮窄像および拡張した大動脈の圧迫による高度の気管狭窄の所見を認めた.シャントは良好に描出されていた.気管支ファイバーでは,気管が左前方より拍動性に圧迫され,内腔は著明に狭窄していた.3 カ月時,カテーテルによる肺動脈縮窄部の拡張・ステント留置術を行ったがチアノーゼの改善は認められなかった.その後,大動脈吊り上げ術施行によりチアノーゼは改善し(SpO2 77%),喘鳴も軽減した.術後のCTでも大動脈による気管狭窄は劇的に改善していた.肺動脈縮窄部ステント内部の評価は困難であったが,肺血流シンチグラフィにて有意な左右差を認めなかった.【まとめ】マルチスライスCTは簡便かつ比較的低侵襲に撮影可能で,その三次元構築像では心血管系と気道系の同時評価により空間的位置関係を明瞭に描出することが可能であった.本症例での診断および治療効果を把握するうえで非常に有用であった.

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