III-B-51
右室-肺動脈バイパスによるノーウッド術を施行した左心低形成症候群の経過―さらなるQOL改善をめざして―
倉敷中央病院小児科1),岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科2)
脇 研自1),横山宏司1),西 有子1),美馬隆宏1),新垣義夫1),馬場 清1),笠原真悟2),石野幸三2),佐野俊二2)

【背景】ノーウッド手術(N術)により左心低形成症候群(以下HLHS)の救命率が格段に向上したが,一部の症例ではN術後にフォンタン手術(F術)まで到達できない症例も存在しさらなる予後改善にためにはこれらに対する対策が必要である.【目的】N術を施行したHLHS治療成績の現状および問題点を明らかにする.【対象および方法】対象は1998年 1 月以降にN術を施行されたHLHS 28例.観察期間 7 カ月~7 年10カ月.SaO2,PA index,左右およびバイパス吻合部での肺動脈径(LPA,RPA,CPA),左右肺動脈圧(LPAP,RPAP),右室駆出率(RVEF),血漿ANP,BNP値および手術段階(N術後;N,両方向性Glenn術後;G,F術後;F)でのおのおのの変化について比較検討した.【結果】(1)N術施行28例中生存26例.G術到達20例,BT shunt術 1 例,G術待機 2 例.F術到達は13例,F術待機中 6 例.死亡はN術後病院死 2 例(敗血症 1,気管支狭窄 1),G術到達前死亡 2 例(自宅突然死),G術後死亡 2 例(病院死 1,遠隔死 1).G術後遠隔死例は生後 3 カ月でG術施行した低出生体重児例(1,716g)でその後take-downしたが自宅で死亡.(2)PA index(N:G:F);192 ± 60:228 ± 103:188 ± 65,RPA(mm);5.6 ± 1.1:7.8 ± 1.4:7.9 ± 1.3,CPA(mm);3.5 ± 1.2:4.0 ± 2.0:5.1 ± 2.3,LPA(mm);5.5 ± 1.4:7.6 ± 1.9:8.0 ± 1.4とCPA径が有意に小さい傾向を示したがPA indexの変化に有意差はなかった.F術到達例の術前PA indexは113~522(中央値186)で12例中 7 例は200以下であった.F術到達例ではSaO2 92.4 ± 1.2%,LPAP/RPAP;13.5 ± 3.6/13.2 ± 3.1mmHg,RVEF 53 ± 2%,HANP/BNP;49.5 ± 18.9/22.2 ± 11.5pg/mlと術後経過は良好であった.【考察】N術生存例は多くが安定してG術,F術まで到達できるようになってきた.さらなる予後改善には低出生体重児,心外奇形合併例に対する対策が必要である.

閉じる