III-D-1
先天性心疾患(CHD)術後心不全に対する心臓再同期化治療(CRT)
社会保険中京病院小児循環器科1),社会保険中京病院心臓血管外科2)
大橋直樹1),松島正氣1),西川 浩1),久保田勤也1),櫻井 一2),阿部知伸2),加藤紀之2),澤木完成2),櫻井寛久2),杉浦純也2)

【背景】近年,成人の心不全,主に虚血や拡張型心筋症などで左脚ブロックを伴う心不全に対して,cardiac resynchronization therapy(CRT)は有効な治療法として確立してきている.一方,先天性心疾患(CHD)術後心不全には,いまだCRTは確立していない.【目的】今回われわれは,CHD術後心不全に対して,CRTを試み,その有効性について検討する.【対象】CHD術後 4 例.内訳は,AVSD/MVR術後 2 例,TGA(III)/Fontan術後 1 例,corTGA/Fontan術後 1 例.〈症例 1〉6 歳,女児.AVSD/MVR術後.術後III度房室ブロック(AVB)に対して,ペースメーカ(PM)植込み.術後 1 年 9 カ月に両心室ペーシング(BVP)施行.〈症例 2〉19歳,男性.AVSD/MVR術後,III度AVB,心不全に対して,PM開始.心不全悪化し,術後 9 年 6 カ月BVP施行.〈症例 3〉19歳,女性,TGA(III).5 歳 8 カ月,Fontan(APC)術施行.術後 4 年頃より,心不全進行.術後14年 2 カ月BVP評価を施行.〈症例 4〉19歳,男性,corTGA.8 歳 8 カ月Fontan(APC)術施行.術後10年頃より心不全を認め,術後10年 5 カ月,TCPC conversion + AV valve plasty + BVP施行.【結果】〈症例 1,2〉右室リードの閾値が高く,左室ペーシングとなったが,EF,NYHA分類は改善した.〈症例 2〉心房ペーシングのみで,心拍出量が増加したが,BVPでは心房ペーシングに比較して有意な増加はみられず,CRTの導入を見送った.〈症例 4〉BVPで,dp/dtの上昇,組織ドプライメージで心室間伝導遅延は短縮した.NYHA分類はIII度からII度に改善した.【結語】CHD術後心不全で心室同期不全が原因として考えられる場合,CRTを積極的に導入することが望まれる.

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