III-D-15
小児慢性心不全におけるるい痩と血中TNFαとの関係
埼玉医科大学小児心臓科1),埼玉医科大学心臓血管外科2)
岩本洋一1),先崎秀明1),熊倉理恵1),石戸博隆1),神山めぐみ1),松永 保1),竹田津未生1),小林俊樹1),朝野晴彦2),加藤木利行2),伊東志乃1)

【はじめに】炎症性サイトカイン,特にTNFαは,各種慢性疾患において上昇し,cachexiaの状態に強く関与していることが示唆されている.近年慢性心不全患者においては,るい痩が心不全予後不良と密接に関連していることが知られてきている.TNFαは心不全においても病態進展に関与し,血中TNFα濃度は,心不全重症度に応じ上昇する.そこで今回われわれは,小児心疾患患者におけるるい痩と血中TNFαとの関係について考察した.【方法】外来通院 3 カ月以上の小児慢性心疾患145例において,血清TNFα濃度を測定し,患者のbody mass index(BMI)との関係を調べた.【結果】BMIが年齢標準のマイナス40%を超える群を 1 群,マイナス40~20%を 2 群,それ以上を 3 群とすると,18%の患者が 1 群に属した.各群で,年齢,男女比,Hb値に有意差はなかった.1 群における血清TNFαは他の群に比し有意に高値を示した(それぞれ4.9pg/ml,2.1pg/ml,2.2pg/ml,p < 0.05).また,1 群の血中BNP値は他群に比し有意に高値を示した(それぞれ127pg/ml,44pg/ml,36pg/ml,p < 0.05).さらに,多変数回帰では,%BMIは,BNP,TNFαと有意な負の相関を示し,同等の心不全の程度においても,TNFαが高いほどるい痩が激しいことが示唆された.【考察】小児慢性心疾患における血中TNFαは,患児のるい痩と密接に関連しており,心不全の病状形成に関わっている可能性がある.今後,前方視的にるい痩,TNFαと予後との関連や,治療の介入によるそれらの変化について検討する意義があると考えられた.

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