III-D-54
左室拡張末期圧におけるventricular interactionの重要性―拡張不全の治療との関わり―
埼玉医科大学小児心臓科1),埼玉医科大学心臓血管外科2)
先崎秀明1),天貝友美1),熊倉理恵1),岩本洋一1),石戸博隆1),松永 保1),竹田津未生1),小林俊樹1),朝野晴彦2),加藤木利行2),松井弥寿枝1)

【はじめに】右心と左心はおのおの単独に存在するのではなく,心室中隔,外層筋,心外膜を通して相互に関連し合い影響を受けている.左室拡張期末期圧(EDP)の上昇においても,右房圧上昇の関与の重要性が,シミュレーション,動物実験,および成人心臓疾患においても示されている.今回われわれは,小児心疾患においても,疾患の種類にかかわらず左室EDPの上昇のある一定の割合で右心圧が関与している仮説を検証した.【方法】心臓カテーテル検査中に下大静脈閉塞中の左室圧断面積関係を構築した.閉塞初期にみられる,拡張末期断面積が不変な状態でのEDPの低下は,右房圧の影響が取れた状態での真の左室EDPを反映するため,閉塞前EDPとの差(ΔP)を,右房圧が左室EDPに及ぼす影響と考えることができる.このΔPと左室EDPとの関係を各種先天性心疾患患者42例にて検討した.【結果】下大静脈閉塞に従い拡張末期断面積も低下してしまう症例も存在し,ΔPが計測できたものは,42例中29例であった.29例でのΔPとEDPの関係は,疾患によらず(Tof術後,CoA術後,VSD,TAPVC術後,AS)ほぼ一定の関係を示し,ΔP = 0.31(EDP - 4.1),r = 0.82で近似できた.すなわち,EDPがおおよそ 4 以上ではその 3 割が右心の圧を反映していることが示唆された.【考察】これらの結果は,左室拡張不全における右房圧のコントロールが,病態改善に非常に有効であることを意味し,拡張不全の治療を考えるうえで重要なポイントと思われた.

閉じる