III-D-57
夜間平均心拍数71bpmはDuchenne型進行性筋ジストロフィでの心合併症の早期発見に有用である
徳島市民病院小児科1),徳島大学発生発達医学講座小児医学分野2),独立行政法人国立病院機構徳島病院小児科3)
井上美紀1),森 一博2),多田羅勝義3),香美祥二2)

【目的】Duchenne型進行性筋ジストロフィ(DMD)において,自律神経機能低下が心不全の進行に先行していることをわれわれは報告してきた.自律神経機能は鋭敏な指標であるが,その分析は簡便とはいえない.本研究では,より単純な「心拍数」を用い,自律神経機能指標の代用となるかを検討した.【方法】徳島病院のDMD患者57名(平均年齢16.0 ± 4.3歳),のべ130回のホルター心電図で心拍変動解析を行い自律神経機能を評価した.交感神経機能を示すLF/HF,副交感神経機能を示すHFと%RR 50,そしてSDNNを指標とした.これらと 1 日平均心拍数,最高心拍数,最低心拍数,夜間平均心拍数との関係を評価した.【結果】(1)自律神経機能指標のなかで,SDNNが最も低年齢から異常値検出頻度が高かった.(2)脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP),左室内径短縮率(SF)との対比では,BNPが正常の97%,SFが正常の96%の例でSDNNは異常値をとった.(3)1 日最高心拍数を除く各心拍数指標とSDNN,%RR 50は高い相関を示したが(r > 0.72),夜間平均心拍数とSDNNが最も高い相関を示した(r = 0.91).(4)SDNN異常を予測するための夜間平均心拍数cut off値は,71bpmであった(感度94%,特異度85%).(5)夜間平均心拍数 < 71bpmと > 71bpmの 2 群間で,約 3 年間のBNP,SFの経過を追跡した結果,71bpm < 群で,BNPはより上昇し,SFは低下する傾向にあった.【考察】自律神経機能指標と心拍数には高い相関がみられ,なかでも夜間平均心拍数がSDNNの代用になり得ると考えられた.夜間平均心拍数71bpm以上の患者では,自律神経機能低下が始まっている可能性が高く,その時点で心不全に対する治療を始める必要があると考えられた.

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