III-E-5
運動誘発性発作を呈する先天性QT延長症候群の運動負荷心電図の特徴について
横浜市立大学附属病院小児循環器科1),新村医院2),長野県立こども病院循環器科3),しばた医院4)
岩本眞理1),新村一郎2),柴田利満4),赤池 徹1),西澤 崇3),鉾碕竜範1),瀧聞浄宏1)

【緒言】QT延長症候群はtorsades de pointes(TdP)を起こし,失神や突然死を引き起こす遺伝性の疾患である.TdP発作は運動,精神的緊張等の交感神経緊張に伴ったストレスによって誘発される.以前われわれは安静時と運動ピーク時のQaT(QRS開始点よりT波ピーク)計測により,運動時発作例では運動によるQaT/RR応答が不良であることを示した.今回は運動直後の心電図の詳細な検討によってその特徴を検討し報告する.【対象】運動・水泳によって失神発作を呈したQT延長症候群12例(男 5,女 7)で初診時年齢 9~38歳(平均13.6歳)である.【方法】ブルース法によるトレッドミル運動負荷心電図を施行し,安静時・運動中・回復期における 1 分ごとの心拍数・QT・QTc(Bazett補正式:QT/RR 1/2)・QaT・QTae(T波ピークから終点)を計測(15秒平均加算心電図または 3 心拍の平均値).安静時と運動ピーク時のQaTよりslope(QaT変化/RR変化)を求めた.【結果】QT延長症候群の家族歴 7 例,遺伝子は 7 例でKVLQT1異常,5 例は検索中.安静時T波形はbroad based T 10例,bifid T 2 例であった.運動負荷時間は 7~11分,最大心拍数153 ± 17bpm(150未満 5 例),安静時QTc487 ± 24msec,負荷後最大QTcは平均で回復期2,3分に認め580 ± 43msecであった.全例で運動後のQTcが安静時を仰臥,その増加分は19 ± 9%を呈した.QaT/RR slopeは0.198 ± 0.06と低値を示した.10例でβブロッカー投与にて発作の出現は抑制されたが,最大心拍数が治療群で低かったこと以外,他の指標に有意差は見いだせなかった.【結語】運動直後のQT変化は特徴的であり治療適応を決めるうえでも重要な指標になると考えられる.

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