III-P-2
カテーテル心房中隔裂開術とステロイドで軽快した慢性右心不全に伴う蛋白漏出性胃腸症
札幌医科大学小児科1),北海道立小児総合保健センター循環器科2)
高室基樹1),富田 英2),堀田智仙1)

慢性右心不全で腸管うっ血に伴う蛋白漏出性胃腸症(PLE)を発症することがある.one and one-half 修復術後の三尖弁閉鎖不全(TR)による慢性右心不全にPLEを合併し,カテーテル心房中隔欠損作成とプレドニン(PSL)により軽快した症例を経験したので報告する.【症例】15歳男児.孤立性右室低形成でBTシャント術を経て 6 歳で両方向性グレン術と心房中隔欠損部分閉鎖術を受けた.その後心房中隔欠損は自然閉鎖した.重度のTRが残存し,心房頻拍,肝線維症などを併発し内科的抗心不全療法を継続していた.15歳時に倦怠感,浮腫の増強がみられ,低アルブミン血症(2.6g/dl)と蛋白漏出シンチからPLEと診断された.水分制限,利尿薬増量,血管拡張薬併用などの効果は一時的で 1~2 カ月ごとの入院加療(利尿薬静注とアルブミン補充)を要した.心臓カテーテル検査では肺動脈圧12/8(9),右室圧16/8,右房圧12/11(10)であり,重度の三尖弁閉鎖不全を認め右心房は拡大していた.右心房の容量負荷軽減目的でカテーテル心房中隔欠損作成術を行った.Brockenbrough法で心房中隔を穿孔しcutting balloon 8mmで拡張した.SpO2は95%から80%まで低下した.その後アルブミン低下は改善したが,4 カ月後,再発した(アルブミン2.3g/dl).ASD径(8mmのスリット)やSpO2は変わらず,欠損縮小による再発ではなく,さらなる欠損拡張による低酸素血症の増悪は不利であると判断した.ヘパリンは児のQOLを著しく低下させると考え,PSLを選択した.PSL 40mg連日投与でアルブミン低下は止まり,シンチでも蛋白漏出が消失した.PSLは 4 カ月で漸減中止しアルブミンは 4g/dl以上で経過している.【結語】慢性右心不全に合併したPLEがカテーテルASD作成術とPSL投与で改善した.

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