III-P-3
治療に反応せず予後不良な経過をたどった,肥大型心筋症,肺動脈弁狭窄,三尖弁異形成の 1 例
京都大学医学研究科発達小児科学1),京都大学医学研究科心臓血管外科学2),大阪大学医学系研究科小児科3)
粟屋智就1),岩朝 徹1),馬場志郎1),鷄内伸二1),平海良美1),池田 義2),成田 淳3),高橋邦彦3),小垣滋豊3),土井 拓1),中畑龍俊1)

内科的治療,外科的介入により血行動態が成立せず,治療に難渋した 1 例を経験した.皆さまのご意見をお伺いしたいと思い症例報告する.症例は 8 カ月の男児で,在胎期間中に異常を指摘されたことはなかった.生後心雑音を指摘され,肺動脈弁狭窄,三尖弁逆流と診断されたが,哺乳全身状態良好で利尿薬投与により経過観察されていた.生後 3 カ月時の心臓カテーテル検査で重症肺動脈弁狭窄と診断した〔左室圧82/6mmHg,右室圧79/8mmHg,肺動脈圧19/9(平均圧13)mmHg〕.肺動脈弁バルーン拡張術を施行したが効果を認めなかった.4 カ月時に外科的治療に臨んだが,術中所見で右室心筋の肥厚と重度の三尖弁異形成を認めた.右室流出路修復術,三尖弁形成術を施行したが血圧が維持できず,両方向性グレン手術を追加して手術を終了した.6 カ月時の心臓カテーテル検査で右房圧の上昇を認め,在宅酸素療法を導入した(酸素負荷で右房圧12→5mmHgと改善).次第に腹部膨満が明らかとなり,精査の結果,多量の腹水貯留を認めた.心臓超音波検査では左室壁肥厚・内腔狭小化(LVEDV 61% of normal)と右心系の著明な拡大を認めた.腹腔ドレーン留置にて多量の乳び腹水の流出を認めた.一時的に全身状態の改善を認めたが,以降も10~20ml/hrで持続的に排液し,次第に電解質異常,低蛋白,低アルブミン血症,上室性不整脈のコントロールが不良となった.心拍出量の低下,静水圧の亢進,血清浸透圧の低下による水頭症,浮腫が進行した.PGI2,PDE阻害剤,利尿薬等の投与を行ったが症状の改善を認めず,11カ月時に永眠した.患児は特異顔貌,肺動脈弁狭窄,水頭症の合併などからNoonan症候群が疑われ,遺伝子検査によりPTPN11遺伝子のイントロン 7 の変異を認め,解析が進行中である.本例では治療に反応せず予後不良な経過をたどったが,初期治療とその後の経過について反省を含め検討中である.

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