III-P-4
心不全・不整脈の管理・治療に苦慮した成人先天性心疾患の 1 例
独立行政法人国立病院機構長崎医療センター小児科1),長崎大学医学部歯学部附属病院小児科2)
岡崎 覚1,2),大坪善数2),山本浩一2),本村秀樹2),手島秀剛1,2),森内浩幸2)

症例は27歳の男性.単心房・単心室・肺動脈閉鎖・無脾症の診断にて乳児期に両側B-T shunt術を施行するもFontan手術の適応外にて外来経過観察となっていた.小児期には特に自覚症状はなかったが,心胸郭比が70%前後と徐々に心拡大・心不全が進行して,20歳頃より易疲労感や動悸を訴え,上室性頻拍発作による意識消失発作も生じるようになった.心機能低下・共通房室弁逆流に伴う心拍出量低下による腎前性腎不全や不整脈発作をたびたび繰り返すようになりジゴキシン,ジソピラミド,カルベジロール等の抗不整脈薬の内服や房室弁縫縮術を施行するも症状の改善は一時的であった.利尿剤の増量により循環血液量が減少すると腎前性腎不全や高K血症による不整脈を誘発し,逆に利尿剤の減量や輸液により水分負荷がかかると房室弁逆流が増強し心房に負荷がかかり,さらに腎不全によるジギタリス血中濃度の乱高下の結果,不整脈を誘発するというようなジレンマに陥った.左室短縮率も20%前後と心機能も低下しているため,抗不整脈薬の内服によりさらに心機能を抑制する可能性もあり管理に難渋した.従来のやり方では不整脈や心不全の管理が困難なため,アミオダロンの内服を開始した.内服開始後より自覚症状もなく体重増加も得られ極めて経過は良好である.

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