III-P-5
生後 3 カ月時に心不全で発見された重症三心房心の剖検例
佐賀大学医学部小児科1),佐賀大学医学部看護学科2)
田代克弥1),西村真二1),浜崎雄平1),宮原晋一2)

三心房心は先天性心疾患の0.1~2%と比較的まれな疾患で外科治療が重症例でも奏効することが知られている.今回われわれは,生後 3 カ月時に重症肺うっ血・心不全で発見され,内科治療に反応せず死亡した三心房心の 1 例を経験したので剖検所見特に肺血管の変化を中心に報告する.症例は 3 カ月男児.39週2,785gで出生し,生後 1 カ月の検診では体重増加も良好で異常なしと診断された.2004年10月末より哺乳量の低下に気づかれ,11月に入り多呼吸・喘鳴を認めるようになった.11月 6 日呼吸状態の急激な悪化で,近医を受診し当科を紹介された.来院時多呼吸を伴う強い不穏状態で呷吟も認めた.胸写は右室肥大と肺うっ血がみられ,心エコーでは右室圧の上昇と右室の拡大肥厚を認めた.入院当初accessory chamberの確認ができなかったが,翌日左房内に隔壁が観察され三心房心と診断した.肺高血圧と右心不全の診断でDOA + DOBと利尿剤で治療を開始し,以後呼吸管理・鎮静の全身管理も加えて治療を行ったが次第に全身状態不良となり,11月10日死亡した.剖検では著明な右室の肥大と拡張を認め,acssesory chamberと左房との交通は 2mmのピンホールしかなくaccessory chamberの内壁の肥厚が観察された.両肺はうっ血が著しく左右の肺静脈はすべてaccessory chamberへ結合し,type IAであった.肉眼的には肺静脈の拡張が目立っており,accessory chamberへの開口部には異常はみられなかった.従来の報告通り,組織学的には肺静脈流出部に強い内膜肥厚と壁の平滑筋の配列の乱れがみられ,リンパ管の拡張も目立っていた.末梢では肺動脈・静脈ともに著しい線維性の全周性肥厚を認めた.肺内血管についてはその血管の機能を検討するため免疫染色で検討したところ,肺血管のACE・PDE3A・PDE5Aいずれの染色性も対照に比べて減弱していた.これは,高度の肺うっ血・肺高血圧により肺血管が強く傷害を受けていたことを示唆する興味深い所見と思われた.

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