III-P-7
PGE1製剤投与中に脳回状の胃粘膜肥厚を認め幽門狭窄症状を来した左心低形成症候群の 1 例
東京都立八王子小児病院小児内科1),東京都立八王子小児病院小児外科2),東京都立八王子小児病院心臓血管外科3)
齋藤美香1),香取竜生1),斉藤一郎1),鳥羽恵美1),佐藤かおり2),村越孝次2),河田光弘3),厚美直孝3),山内治雄3)

【はじめに】動脈管依存性チアノーゼ性心疾患の児にはPGE1の長期投与が必要となる場合がある.副作用として,無呼吸,発熱,低ナトリウム血症などが知られている.今回われわれは,PGE1製剤投与中に脳回状の胃粘膜肥厚を認め,多量の粘液分泌により幽門通過障害を来した左心低形成症候群の 1 例を経験した.【症例】日齢 4 にductal shockにて当院搬送となった男児.左心低形成症候群と診断,PGE1投与を開始し,日齢 8 に両側肺動脈絞扼術を施行した.投与開始 5 日目に腹部膨満出現,胃内にゲル状の粘液が多量に分泌・貯留するようになった.エコー上,胃粘膜は脳回状に肥厚し,幽門の通過障害を来したため,中心静脈栄養を余儀なくされた.その後絶食とすることで徐々に改善し,投与開始17日目より注入再開となったが,胃粘膜の形態異常は残存していた.30日目よりlipo-PGE1へ変更したが症状の変化は認めなかった.また,PGE1投与36日目に上部消化管出血を認めたため,制酸剤内服を開始したところ 5 日目より再び多量の粘液分泌・嘔吐があり,胃内での腸内細菌増殖を認めた.制酸剤投与中止により粘液の貯留は改善した.60日目に上部消化管内視鏡検査,胃粘膜生検を行ったが明らかな粘膜肥厚は認めず慢性胃炎と診断した.【考察】PGE1製剤投与例に,粘液産生が増加し幽門狭窄やイレウスを来すという報告が散見される.長期投与例でみられることが多く,その発生は用量依存性であり,投与中止により改善するという.本症例ではPGE1投与開始後 5 日で症状発現し,投与量を変更せずに絶食管理で軽快している.また制酸剤投与により同症状が再燃し,中止により速やかに改善された.PGE1による副作用としての粘液産生分泌,通過障害出現,およびその増悪因子の存在について文献的考察を行った.

閉じる