III-P-8
十二指腸チューブ(EDT)栄養が行われた先天性心疾患患児18症例の検討
埼玉医科大学小児心臓科1),埼玉医科大学小児心臓外科2)
岩本洋一1),小林俊樹1),熊倉理恵1),石戸博隆1),竹田津未生1),松永 保1),先崎秀明1),朝野晴彦2),加藤木利行2)

【背景】先天性心疾患(CHD)患児において胃食道逆流症(GER)を合併した場合,誤嚥性肺炎を起こすことがあり,呼吸状態の悪化,人工呼吸器からの離脱が困難になったり,ミルク量を制限せざるを得ず体重増加が図れないことがある.当院においてはそれらの児に対してEDTを留置し,経腸栄養を行っている.【目的】当院でEDT留置が行われたCHD患児の,経腸栄養の効果を検討する.【対象】当院で2002年11月以降に行われたEDT留置が行われたCHD患児18人〔TOF 4,単心室 2,ECD 2,CoA 2,TGA 2,DORV 1,VSD 1,エプスタイン奇形 1,PDA 1,肺高血圧症(PH)2〕.EDTが留置された月齢は中央値 2 カ月(0~16カ月)であった.経過により以下の 3 群に分けられた.〈1 群〉ミルクの経口哺乳あるいは胃内注入直後に喘鳴が認められた14例.〈2 群〉喘鳴は認められなかったがミルクの消化が悪く,原因が心不全かGERによるものかの判別が困難であった 2 例.〈3 群〉PHがあり,GERが悪化因子の一つと疑われた 2 例.【結果】1 群では,すべて上部消化管造影(UGI)が施行されGERが認められた.全例でEDT挿入後に喘鳴が消失し,ミルクの量の制限が必要なくなり体重増加が良好であった.2 群で 1 例は,UGIでGERが認められなかったが,EDT栄養によりミルクの消化が改善し体重増加が良好であった.他の 1 例はUGIを行わず,EDTを留置し,ミルクの消化が改善した(のちにUGIにてGERが確認された).3 群では,2 例ともUGIでGERが認められ,EDT栄養を開始,PHの改善を認めた.【結語】全例でEDT栄養により,体重増加が改善し良好な経過を得た.GERを抑えることで治療後もPHが残存する症例に対してもEDT栄養は効果があることが認められた.EDTはGERに対する治療として著明に効果を示した.しかし,EDT挿入は透視下で行わなければならず放射線被曝があり,今後の簡便な挿入方法の考案が必要と思われた.

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