III-P-9
青年期に達した先天性心疾患患者の健康関連QOL
久留米大学医学部小児科
牟田広実,姫野和家子,須田憲治,松石豊次郎

【目的】青年期に達した先天性心疾患患者の健康に関連した生活の質(HRQOL)を調査すること.【方法】当院成人先天性心疾患外来受診中の16歳以上の患者に対し,HRQOLの評価尺度であるSF-36を用いて調査した.SF-36は,8 つの下位尺度〔身体機能,日常役割機能(身体),日常役割機能(精神),全体的健康感,社会生活機能,体の痛み,活力,心の健康〕により構成されるHRQOLの包括的尺度であり,性・年代別の国民標準値と比較して検討することができる.疾患分類は,small VSDをはじめとする軽症心疾患で修復術未施行群(N群),ファロー四徴症をはじめとする修復術施行群(R群),Eisenmengerやチアノーゼが残存する修復術不能群(U群),Fontan術後群(F群)とした.SF-36の各下位尺度を性・年代別の国民標準値と比較し,またNYHA分類や血漿BNP値との比較検討も行った.【結果】136名より回答を得た(N群:48名,R群:69名,U群:14名,F群:5 名).N群では,各下位尺度とも性・年代別の国民標準値と比較し有意差はみられなかった.R群,F群ではすべての下位尺度において軽度低下していた.U群では特に身体機能,日常役割機能(身体)といった身体機能に関する尺度や活力,全体的健康観が著明に低下していた.NYHA分類では,I度の群では各下位尺度とも性・年代別の国民標準値と有意差はみられなかった.II度,III度になるにつれ,身体機能,日常役割機能(身体)といった身体機能に関する尺度だけでなく,心の健康などの精神心理的な尺度も低下していた.血漿BNP値とSF-36での身体機能には有意な負の相関がみられた(r = -0.35,p < 0.001).【結語】青年期に達した先天性心疾患患者においては,根治術を施行できた場合でも身体的・精神的問題を抱えている場合があり,これらのQOLを評価する尺度を用いることで,今後のより良いケアに結びつけることができると考えられた.

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