III-P-10
小児期における卵円孔開存の経時的観察
自治医科大学小児科
齋藤真理,市橋 光,保科 優,白石裕比湖,桃井真里子

【目的】近年,若年者脳梗塞や塞栓源不明の脳梗塞の原因として,卵円孔開存による奇異性脳塞栓の重要性が指摘されている.あらかじめ卵円孔開存が診断されていれば,生活習慣に気をつけるなどの予防処置を実施できる可能性もある.卵円孔は本来,自然閉鎖の傾向が強く,小児循環器科医が注意して経過観察することは少ない.そこで,卵円孔の自然閉鎖の時期および頻度を確認するため,後方視的にその経時変化を検討した.【対象】2003年 1 月 1 日~2004年12月31日に出生し,心エコーで卵円孔開存と診断され,経過観察された正期産の乳幼児76例.【方法】外来カルテおよび心エコー検査所見を後方視的に検討した.検討項目は,診断時月齢,診断時卵円孔径,動脈管開存や末梢性肺動脈狭窄の合併と卵円孔の自然閉鎖との関連とした.【結果】(1)診断時,生後 4 カ月以内で,卵円孔径が 2mm以下の例は全例が自然閉鎖した.動脈管開存や末梢性肺動脈狭窄の合併は,卵円孔の自然閉鎖時期と関連がなかった.(2)生後15カ月以内に,卵円孔開存の 8 割は自然閉鎖した.診断時月齢,診断時卵円孔径,動脈管開存や末梢性肺動脈狭窄の合併と自然閉鎖の時期は関連がなかった.【結論】診断時に生後 4 カ月以内で卵円孔径が 2mm以下の例は,全例自然閉鎖するため,経過観察の心臓超音波検査は不要である.それ以外の卵円孔開存は,生後15カ月時に再評価をすると,8 割が自然閉鎖している可能性がある.生後15カ月を超えて残存する卵円孔開存は,その後も開存する可能性があり,就学時の検査などが考慮される.

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