III-P-11
後天性疾患に対する救命処置としての体外式補助循環の経験
岡崎市民病院小児科1),豊川市民病院小児科2)
長井典子1),瀧本洋一1),小倉良介2)

【はじめに】小児における体外式補助循環は,一方では新生児のPPHNの救命のためのpulmonary life supportとして,もう一方では,心臓手術後のポンプオフできない症例に対する人工心肺を用いたcardiac life supportから,その後,劇症型心筋炎などの後天性の心疾患に対する救命処置として進化してきた.また,成人でポンプ不全例に対して,PCPSやIABPなどが,広く施行されるに伴い,小児例でも,これらの方法も導入されつつある.今回12年間に当院で経験した,後天性疾患に対する救命処置としての補助循環の経験を報告する.【対象】1993~2005年に,従来の治療では救命が困難と判断され,体外式補助循環を施行した 9 例.そのうち,cardiac life supportとしては,劇症型心筋炎 4 例,インフルエンザによるSIRS(劇症型心筋炎 + 脳症,多臓器不全)1 例,溺水後(LQT?)1 例の 6 例で,pulmonary life supportとしては,MASによるPPHN 1 例,喘息重積発作後の多発性気胸 1 例,呼吸不全から心停止を起こしたVAHS 1 例の 3 例.心筋炎の 1 例と喘息,MASの各 1 例を除いた 6 例は,蘇生後の症例である.【方法】頸動静脈を用いたV-A ECMO 6 例(うち 1 例はV-VからV-Aに変更),PCPS + IABP 2 例,IABP単独 1 例.【結果】全員がポンプから離脱はできた.しかし,SIRSの 1 例と溺水後の 1 例は脳波が平坦となり,1 カ月後に死亡した.また,VAHSの 1 例は,中~高度の脳障害を残した.劇症型心筋炎の 1 例は,数年間DCM様の心筋障害が残存していたが,その後心機能はほぼ正常化し,現在は運動時のVPCが残存している.残りの 5 例は遠隔期の後遺症はない.【結論】体外式補助循環はcardiacにもpulmonaryにも救命処置として有用であるが,今後,いかに脳へのダメージを少なくするかが課題である.

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