III-P-12
大動脈縮窄複合・大動脈弓離断複合における上下肢の経皮的酸素飽和度測定
岩手医科大学小児科
佐藤陽子,小山耕太郎,外舘玄一朗,高橋 信,千田勝一

【目的】動脈管依存性体循環では下肢の酸素飽和度が上肢より低い分離性チアノーゼを呈することが知られているが,視診によって認識できることは少ない.上下肢の経皮的酸素飽和度(SpO2)測定の意義を検討した.【方法】対象は 2 心室修復が可能な大動脈縮窄(CoA)複合と大動脈弓離断(IAA)複合の20例(男児17例,女児 3 例,日齢(平均 ± 標準偏差)10.5 ± 7.4日,在胎週数38.9 ± 0.9週,出生体重 3,071 ± 317g).大動脈病変はCoA 16例,IAA 4 例,心内病変はVSD + ASD 18例(DORV 1 例),ASD 2 例であった.入院時に動脈管が完全にまたはほとんど閉鎖していたA群 6 例と,大きく開存していたB群14例で,分離性チアノーゼの有無,上下肢のSpO2とその差,上下肢血圧差を検討した.【結果】動脈管が開存していても視診で分離性チアノーゼを認めた例はなかった.A群のSpO2は上肢92.7 ± 8.0%,下肢92.3 ± 6.3%,B群のSpO2は上肢96.8 ± 2.8%,下肢91.9 ± 4.9%で,B群において上肢に比べ下肢のSpO2は有意に低値であった(p < 0.05).上下肢のSpO2の差はA群2.3 ± 1.6%,B群5.5 ± 3.1%とB群で有意に大きかった(p < 0.05).しかし,B群の 3 例は上下肢差が 2%以内であり,これらの症例で心不全が強かった.B群の 1 例で経過中に上下肢差が消失した.上下肢の収縮期血圧差はA群20.0 ± 13.7mmHg,B群8.5 ± 7.3mmHgであった(p < 0.05).【結論】視診により分離性チアノーゼを認めることは実際にはまれであり,実用的な身体所見とは言い難い.下肢のSpO2は上肢より低いが,その差は 5%程度と小さい.上下肢差はCoAの程度と動脈管,肺血管抵抗値,心内左右短絡の大きさによって影響され,変動することから,出生直後からの経時的な測定が重要である.

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