III-P-15
Transxiphoid approachによるASD閉鎖術の手術時間短縮の効果
三重大学大学院医学系研究科胸部心臓血管外科1),三重大学大学院医学系研究科小児科2)
横山和人1),高林 新1),梶本政樹1),新保秀人1),大橋啓之2),澤田博文2),早川豪俊2),三谷義英2)

【目的】当科では小児ASD閉鎖術時に胸骨切開をほとんど行わないtransxiphoid approachを第 1 選択としており,最近の症例では手術時間短縮が可能となっている.transxiphoid approachによるASD閉鎖術の手術時間短縮の効果について検討した.【対象と方法】対象は1999年以降のtransxiphoid approachで閉鎖術を行った小児ASD 32例とした.2003年 9 月以降の10例をA群,それ以前の22例をB群とし,術後経過について比較検討した.年齢(A群;69 ± 12,B群;61 ± 30カ月),体重(A群;17.5 ± 1.8,B群;17.1 ± 6.2kg)に差はなかった.ASD術式はB群の静脈洞型下縁欠損でパッチ閉鎖を行った 1 例を除く全例で二次孔欠損に対し直接閉鎖を行った.B群の 6/22例(27%)に対し,TVP:4,肺動脈弁交連切開:2 例を同時施行した.【結果】A群で手術時間(A群:127 ± 24,B群:255 ± 38分),体外循環時間(A群:42 ± 8,B群:79 ± 21分),大動脈遮断時間(A群:11 ± 3,B群:28 ± 15分)はおのおの有意に短縮した(すべてp < 0.01).術後挿管時間(A群:2.1 ± 1.6,B群:2.1 ± 1.4時間)は同等で,両群とも全例術翌日にICUを退室した.A群の全例が術翌日にドレーン抜去可能で,B群の留置期間1.6 ± 0.7(1~3)日に比し短縮した(p < 0.01).術後鎮痛座薬(acetaminophen:10mg/kg)使用回数はA群:0.9 ± 1.2,B群:1.5 ± 1.9回で差はなかったが,鎮静剤(phenobarbital:5mg/kg)使用回数はA群:1.2 ± 1.3回がB群:4 ± 3.4回より少量であった(p < 0.01).A群の呼吸器離脱 6 時間から術翌日 6 時までの経口摂取量(203 ± 117ml)は,B群の103 ± 61mlに比し有意に多く(p = 0.03),A群の術後歩行開始時期(A群:1.7 ± 0.8,B群:2.7 ± 1.1日)は短縮し,早期の離床が可能であった(p = 0.03).【結語】皮膚小切開のtransxiphoid approachによるASD閉鎖術においても手術時間短縮が可能であった.手術時間短縮によって術後鎮静剤の減量,早期離床の臨床的効果が得られた.

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