III-P-16
ePTEF縫合糸(CV-0)による胸骨閉鎖固定法の工夫と長期成績
新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸循環外科
渡辺 弘,高橋 昌,羽賀 学,登坂有子,白石修一,林 純一

【はじめに】開心術時の胸骨正中切開は鋼線で胸骨の閉鎖固定が行われることが多いが,われわれはePTEF縫合糸(Gore-Tex CV-0)を小児例で用いて15年が経過している.ePTEF縫合糸での胸骨閉鎖固定での工夫と利点を報告する.【対象と方法】1991年以降の小児開心術例で胸骨正中切開を行った体重15kg以下の症例は基本的には全例でePTEF糸を用いた.体重15~20kg症例での使用は術者の判断によった.胸骨閉鎖法:ePTEF糸(CV-0)を半分にして胸骨の 6 カ所にかける.ePTEF糸は胸骨下部より順次結紮するが,助手は結紮する一つ頭側の糸を引き寄せて結紮部位の胸骨が確実によるように補助する.この方法を採用してから胸骨の固定が確実になった.【結果】400例以上で使用したが,胸骨の固定が不十分で鋼線でやり直した症例はなかった.われわれの胸骨固定法は有用であると判定された.ePTEF糸による胸骨閉鎖固定は:(1)CV-0 は針と糸の太さが同じでatraumaticであり,胸骨刺入部からの出血がない.(2)新生児の柔らかい胸骨を締めても胸骨が裂けたり割れたりしない.(3)皮膚が薄い患児においては鋼線が皮膚に対する刺激となって,発赤や化膿の原因となることがあるが,CV-0 は柔らかいために皮膚への刺激が少ない.(4)胸部X線で映らないだけでなく,CT検査やMRI検査で鋼線と異なりハレーションを起こさない.このため術後の検査・画像診断に極めて有用であった.(5)遠隔期にCV-0 に起因する合併症は認めなかった.【結論】ePTEF縫合糸(Gore-Tex CV-0)は体重15kg以下の小児例では鋼線に劣らぬ強固な固定が可能であり,手術の優れた特徴があるので,小児の胸骨閉鎖固定法の第 1 選択として妥当である.

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