III-P-18
小児開心術における簡便な心筋保護液(ミオテクター)
弘前大学医学部呼吸器心臓血管外科
大徳和之,鈴木保之,福井康三,福田幾夫

開心術中の心筋保護液はさまざまな工夫が施されているが調整が煩雑になることは否めない.当科では先天性心疾患開心術の時にはglucose-insulin-potassium(GIK)を基本とした心筋保護液を事前に作製し(ソルデム 3A 500ml,インシュリン 5U,ハイドロコーチゾン25mg,ヘパリン 5mg,7%メイロン15mlに初回のみKCL 5.6mEq混入)投与していたが,より簡便な心筋保護液として2004年 4 月から先天性心疾患においてミオテクターを使用した.VSD根治術においてミオテクターの心筋保護効果につきGIKと遜色がないか否か検討した.【対象】2002年 4 月~2005年12月VSDパッチ閉鎖術を受けた10歳以下の小児でGIK群19例,ミオテクター群(MYO群)7 例.【結果】術前因子の検討ではGIK群 vs. MYO群で月齢24.1 ± 17.1 vs. 20.8 ± 38.5カ月,術前体重9.8 ± 4.2 vs. 7.2 ± 8.3kg,Qp/Qs 2.3 ± 0.9 vs. 2.4 ± 1.0,肺血管抵抗3.0 ± 2.1 vs. 3.6 ± 2.4単位,平均肺動脈圧36.4 ± 17.6 vs. 42.1 ± 17.7mmHg,左室圧89.8 ± 11.7 vs. 79.8 ± 4.3mmHg,LVEDP 11.9 ± 3.1 vs. 10 ± 2.8mmHgといずれも有意差なし.術中因子としては手術時間160.5 ± 31.9 vs. 166.6 ± 18.5分,人工心肺時間69.9 ± 19.4 vs. 74.9 ± 15.4分,遮断時間32.7 ± 10.5 vs. 37.1 ± 8.6分,人工心肺離脱時のカテコラミン使用量(DOA + DOB)4.6 ± 2.4 vs. 4.1 ± 1.6cであった.両群ともに遮断解除後速やかに洞調律へ復帰.術後因子では第 1 病日のCPK-MB値43.8 ± 23.1 vs. 43.3 ± 24.1U/lと差がなく,また術後は重篤な不整脈は両群ともに発症していない.【結語】ミオテクターはGIKと比較して術後経過も同等なことから簡便で効果的な心筋保護液であると思われた.

閉じる