III-P-19
先天性プロテインC欠乏を合併した先天性心疾患の治療経験
奈良県立医科大学胸部・心臓血管外科1),奈良県立医科大学小児科2),奈良県立医科大学周産期医療センター3)
吉川義朗1),福田和由2),田村大和1),多林伸起1),阿部毅寿1),桑田俊之1),畠田和嘉1),広瀬友亮1),高橋幸博3),吉岡 章2),谷口繁樹1)

プロテインC(PC)の先天的な欠乏症や異常症では過凝固状態を呈することになり,深部静脈血栓症,肺梗塞,腸間膜静脈血栓症など主として静脈系の血栓症を起こしてくる.今回先天性PC欠乏を合併する 2 例の先天性心疾患患児の治療経験を報告する.【患児 1】10カ月の男児でASD(central type)である.生後 3 日目に原因不明の心肺停止となり,NICUに収容された.翌日のFDP 416と異常高値であった.PC活性10%未満,プロテインS(PS)活性23%と異常低値であった.その後血液学的follow-upでもPC活性は48%であった.体重増加不良,PC欠乏による合併症予防も考慮し,ASDに対し直接閉鎖術を行った.術後血栓症予防を目的にヘパリン20単位/kg/hの投与を10日間施行し,術後14日目に退院し,現在元気に外来通院中である.【患児 2】3 歳の女児でAVSD(unbalanced ventricle),PDAである.生後 6 カ月に心カテで,PA = 112/58(80)mmHg,Qp/Qs = 1.36,LVEDV = 65%Nであり,PAB + PDA ligationを施行した.術後 4 日目に脳梗塞を発症した.PC活性30%,PS活性114%で,先天性PC欠乏と診断した.3 歳時に行った心カテにてPA =(13)mmHg,Qp/Qs = 0.93,LVEDV = 61%Nであった.また共通房室弁逆流は高度であった.Fontan循環ではさらにPC活性が低下し,術後血栓・塞栓症は致命的である.左室容積が狭小であったが,2 心室修復を行うこととした.2 パッチ法で心内修復を行い,術後ヘパリン投与を行った.本例は心房間に大きな自己心膜パッチを用いたので,ACT 150を目標に管理し,投与期間はFDP,D-Dimerをモニターし,正常化した術後30日まで持続投与した.術後経過良好で,術後32日に退院し,現在外来通院中である.【まとめ】先天性PC欠乏はまれな疾患であるが,手術などによる何らかの因子が加わると血栓を起こしやすくなると考えられており,ヘパリンを用いた抗凝固療法は必須である.また,治療戦略(手術時期・方針)決定の際,患児の予後を左右する重要な因子である.

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