III-P-21
ダウン症候群のフォンタン型手術症例の中期予後
兵庫県立こども病院循環器科
城戸佐知子,鄭 輝男,佃 和弥,藤田秀樹,加藤竜一,齋木宏文

【はじめに】当院ではこれまでに,3 例のダウン症候群に対してフォンタン型手術を施行しているが,潜在的に肺の条件が悪いダウン症候群に対するフォンタン型手術の妥当性については,まだ検討の余地があると思われる.今回,いずれの症例も術後 1 年半以上の経過を確認することができたので,その経過および中期予後について検討した.【症例】年齢は 4 歳 8 カ月,5 歳 8 カ月,9 歳11カ月,いずれも女児.すべて共通房室弁口遺残で,房室弁形態の異常により二心腔修復を断念した.いずれの症例も,グレン手術後,上大静脈系から下大静脈への側副血行路の著しい発育により著明な低酸素血症を来し,SpO2 = 60%台がおもであった.グレン手術からフォンタン型手術までの期間は,それぞれ 1 年 8 カ月,5 カ月,3 カ月半.フォンタン型手術前の肺動脈圧は11,15,15mmHgで,2 例にfenestrationを追加した.術後,一時的にNOを使用した症例は 2 例,術後 1 カ月のカテ-テル検査での肺動脈圧は13~15mmHgであった.術後の投薬は,利尿剤・抗凝固剤以外には,全症例でACE阻害剤を使用,その他,1 例でデノパミン,他の 2 例でPGI2を併用した.術後経過年数は 1 年 9 カ月,2 年 6 カ月,3 年.SpO2はいずれも90%前後で,術後 1 年半以上,活動量の増加,成長による低下は認めていない.在宅酸素を行っているのは 1 例のみであるが,経過とともにSpO2はより良好な数字で安定し,間もなく中止の予定である.この症例は術前低酸素血症で最も管理に難渋したが,現在歩行も可能となっている.いずれの症例も,フォンタン型手術後には,グレン手術後のような静脈系の側副血行路の著明な再増殖は認められていない.【結語】ダウン症候群に対するフォンタン型手術症例の中期予後は良好であり,SpO2の低下も認めない.しかし,良好な状態を維持するための投薬内容や酸素使用の是非,長期予後は不明であり,今後も注意深い経過観察を要する.

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