III-P-22
白血病類似疾患を合併するDown症候群に対する心臓手術 2 例
愛媛県立中央病院心臓血管外科1),愛媛県立中央病院小児科2),愛媛大学医学部小児科3)
長嶋光樹1),日比野成俊1),佐藤晴瑞1),堀 隆樹1),石戸谷浩1),清家愛幹1),富野哲夫1),山本英一2),檜垣高史3)

Down症候群では,白血病発生率が正常児の20倍といわれている.新生児期には,一過性異常骨髄増殖症(transient abnormal myelooiesis:TAM)の発症が約10%に認められ,なかには,骨髄異型性症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)を経過し,真の白血病へと移行するものもある.これらの多くは先天性心疾患を合併する頻度が高いという報告がある.心疾患と白血病類似疾患とでは,水分管理,輸血など,治療が相反する場合があり,管理に難渋することがある.2 例の白血病類似疾患を合併するDown症候群に対する心臓手術を経験したので報告する.【症例 1】37週にて出生.腹水著明,白血球数79,300/μl,骨髄穿刺にて,芽球の末梢血/骨髄比は5.0とTAMあるいは先天性白血病疑い.心奇形は心室中隔欠損(VSD).その後,貧血,血小板減少が進行.日齢10日ごろには,白血球数正常化.日齢14には血小板4.8万/μlに減少するも,徐々に回復.貧血には輸血を行った.日齢23に肺動脈絞扼術施行.術後,血小板減少が再度進行し,3.8万/μlとなったため,血小板輸血を行った.その後,出血傾向等なく順調に経過.その後の経過にても,血液検査異常等なく経過.1 歳 6 カ月時にVSD閉鎖 + 肺動脈形成術施行.術後も血小板の異常減少等なく,現在,外来にて経過観察中.【症例 2】36週にて出生.生後 3 カ月検診時に,Down症候群,VSDと診断.またその際,末梢血での芽球増加,血小板減少(4~5 万/μl),貧血を認め,骨髄検査などからMDS,骨髄繊維症と診断.血小板輸血を行いながら経過を観察.生後 8 カ月時にVSD閉鎖術施行.術前より,血小板数1.5~2 万/μlのため,周術期に血小板輸血を行い,出血傾向などの合併症なし.術後安定期での骨髄検査にて芽球増加を認め,白血化(M7)と診断し,化学療法施行.寛解導入となり,現在外来にて経過観察中.

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