III-P-23
先天性心疾患を伴うダウン症候群の甲状腺機能の検討
東京慈恵会医科大学小児科
藤原優子,寺野和宏,安藤達也,河内貞貴,高木 健,衞藤義勝

【目的】先天性心疾患を伴うダウン症候群の経過観察は年齢を重ねると,循環器外来のみの経過観察になりがちである.このため小児循環器医はダウン症候群の経過観察機能も併せ持っている.ダウン症候群に合併しやすい甲状腺異常について,心疾患経過観察とともに検討した.【方法】先天代謝スクリーニングでは異常なしとされた先天性心疾患で経過観察しているダウン症候群27例(VSD 12例,ASD 1 例,AVSD 9 例,PS 2 例,PDA 2 例,TOF 1 例)を対象とした.胆石合併の 1 例以外,療育を除くほかの診療機関は受診していない.術後22例.年齢10歳以上は 8 例であった.fT3,fT4,TSHでスクリーニングを行い,甲状腺機能障害例では診断を行った.【成績】甲状腺採血の結果,7 例が治療対象であった.心嚢水貯留により 1 例は診断に至った.10歳以上の 8 例中 4 例(50%)が治療対象であった.fT3,fT4,TSHすべてが正常例は 3 例(11.1%)のみで,治療対象外の20例中18例はeuthyroidを呈していたが,2 例はTSHが7μIU/ml以上10μIU/mlであり,注意深い観察が必要と診断した.治療対象例 7 例で抗体スクリーニングを行った.抗TPO抗体陽性 5 例,抗サイログロビン抗体陽性 4 例,TSHレセプター抗体陽性 1 例であった.7 例全例で甲状腺機能低下症が認められたが,1 例は経過中TSAb陽性となり甲状腺機能亢進症を発症した.またTSHレセプター抗体陽性の 1 例は萎縮性甲状腺機能低下症と考えられた.心嚢水貯留の 1 例は心嚢ドレナージ後,甲状腺機能低下治療により再発は認めていない.【結論】過去の報告では成人甲状腺機能低下はダウン症の35%といわれているが,今回の結果ではさらに高率であり,年少児であっても,最低年 1~2 回の甲状腺機能評価が必要である.

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