III-P-27
成人ファロー四徴症根治手術例の検討
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科1),岡山大学医学部・歯学部附属病院循環器疾患治療部2),山大学大学院医歯薬学総合研究科小児科3),岡山大学大学院医歯薬学総合研究科麻酔・蘇生学4)
神吉和重1),赤木禎治2),笠原真悟1),吉積 功1),石野幸三1),岩崎達雄4),戸田雄一郎4),岡本吉生3),大月審一3),佐野俊二1)

【目的】ファロー四徴症は乳幼児期の定期健診で発見され,早期に根治手術を施行される場合がほとんどである.しかし,何らかの理由で根治術を行われないままに成人期に達する症例もまれに経験される.成人期に根治術を行ったファロー四徴症の早期・中期成績を後方視的臨床病理学的に検討する.【方法】2000年以降に当院で根治手術を行った成人ファロー四徴症は 4 例であった.手術時年齢は59・50・59・62歳で 1 例のみが女性であった.2 例は24・19歳で姑息術(Blalock-Taussig shunt)を受けており,それぞれ35・40年後の根治術で,2 例は初回手術であった.いずれも幼少時より心疾患を指摘されて手術を勧められたこともあったが,拒否・放置していた.酸素飽和度は85~90%,全例NYHA 3 度であった.術前の右室肺動脈圧較差は100mmHg以上で,肺動脈弁逆流は軽度であった.手術は心室中隔パッチ閉鎖と右室流出路の筋肉切除を施行した.右室流出路~肺動脈弁・肺動脈再建の方法は,右室切開・肺動脈弁切除・1 弁付きゴアテックスパッチ 1 例,弁尖弁輪切開・直接縫合閉鎖 2 例,肺動脈弁位生体弁 1 例であった.【成績】手術死亡は認めなかった.1 例で一時的血液透析と長期人工呼吸器管理(11日)を要した.術前から徐脈頻脈発作を認めた 1 例で発作性心房細動・徐脈を認め,電気的除細動と恒久ペースメーカ植込みを行った.血液酸素飽和度はすべての症例で98%以上になった.術後 4 年 4 カ月~5 年 8 カ月を経過し,死亡は認めていない.1 例に心室中隔欠損遺残を認め,2 年 6 カ月後に再手術を行った.1 例に術後 3 年で脊髄梗塞・対麻痺を生じた.肺動脈弁逆流はいずれも軽度で,3 例がNYHA 1 度,1 例がNYHA 2 度である.NYHA 1 度の 3 例は,心血管作動薬を全く内服していない.【結論】成人ファロー四徴症の手術成績は良好であった.根治手術を行われずに成人に達した症例でも,手術によって著明な症状の改善が期待できる.

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