III-P-28
大動脈縮窄と頸部動脈起始異常を合併したファロー四徴症の 1 例
済生会宇都宮病院小児科
高橋 努,井原正博

【はじめに】ファロー四徴症と大動脈縮窄の合併例を経験した.【症例】日齢 5 の男児.妊娠,分娩歴に異常を認めなかった.産院にて在胎39週,出生体重2,670g,自然分娩で出生した.出生直後より心雑音を認め,当科紹介受診した.心エコー上,ファロー四徴症および大動脈縮窄と診断し入院した.大腿動脈は触知上減弱しているが,測定上は上下肢差はなかった.チアノーゼはなく,SpO2は90後半~100だった.胸部X線で心胸郭比は52%で,肺血管陰影の増強を認め,心電図で右室肥大所見を認めた.心エコーでは30~40%の大動脈騎乗,心室中隔欠損(欠損孔 6mm,左右短絡),右室流出路狭小,肺動脈弁狭窄(PG = 42mmHg),心房中隔欠損(欠損孔 4mm),大動脈縮窄を認めた.逆行性橈骨動脈造影と造影 3D-CTを施行し,左鎖骨下動脈分岐部における大動脈縮窄,頸部動脈分岐異常(腕頭動脈と左総頸動脈が共通幹から出ており,左椎骨動脈が大動脈弓から直接出ている)を確認した.肺血管陰影の増強と体重増加不良を認めたため,フロセミド(1mg/kg/day)とスピロノラクトン(2mg/kg/day)の内服を開始した.以後,哺乳良好となり,心不全およびチアノーゼの進行なく,利尿剤内服を継続のうえ,外来フォローとした.現在外来にてSpO2は90前半で,体重増加良好である.今後,体重 8kgを目安に心臓カテーテル検査,手術を予定している.【考察】右室流出路と肺動脈弁の狭窄がエコー上,比較的強いと思われるが,左右短絡となっているのは,大動脈縮窄合併が関与している可能性がある.今後,心不全が増強するか,チアノーゼが増強するか,注意深く経過をみていく必要がある.手術に関しては,大動脈再建と心内修復術を同時に行うか検討が必要である.ファロー四徴症と大動脈縮窄の合併例は極めてまれであり,成因について文献的考察も含めて報告する.

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