III-P-29
当院における22q11.2欠失症候群に合併した主要大肺動脈側副血行路(MAPCA)の検討
東京大学医学部小児科1),東京大学医学部胸部外科2)
杉村洋子1),林 泰祐1),小野 博1),中村嘉宏1),渋谷和彦1),賀藤 均1),村上 新2)

新生児,乳児早期に,高肺血流による心不全症状が出現するタイプの主要大肺動脈側副血行路(MAPCA)で,初回手術の時期が早ければ早いほど,最終的な心内修復術に到達するのが困難な印象を受ける.また,MAPCAの22q11.2欠失症候群への合併率が高いことは知られている.今回,2 例の治療に難渋した22q11.2欠失症候群の肺動脈閉鎖(PA),心室中隔欠損(VSD),MAPCAを経験した.そこで,これを機会に当院の過去のMAPCA症例について後方視的に検討を加えた.対象は当院でこれまでに経験したMAPCA合併例12例.男性 6 例,女性 6 例で,このうち22q11.2欠失症候群が 3 例,fish法で確認はしていないが,疑わしい症例が 2 例であった.現在の年齢は 5 カ月~30歳.手術未施行が 2 例,姑息術を含め手術を施行された症例は10例.うち,心内修復術を終了した症例が 4 例であった.22q11.2欠失症候群もしくは疑われる症例で心内修復術を終了した例は 2 例で,うち 1 例は現在,低酸素血症状が著明である.初回手術の年齢は,1 カ月~15歳で,多くは 1~2 カ月以内であった.最近経験した 2 症例についてさらなる検討を加えた.症例 1 はPA,VSD,MAPCA,右大動脈弓(RAA),両側動脈管(bil. PDA).症例 2 はPA,VSD,MAPCA,RAA,PDA.どちらも生直後より高い肺血流による多呼吸を認め,1 週間ほどで人工呼吸管理となった.1 カ月時にPDAにかわるBTシャントを試みているが,症例 1 はその後の肺動脈(特に右肺動脈)の成長が不良で,現在は右肺動脈は結紮され,左肺動脈-右室導管が形成されている.症例 2 は左BTシャントを試みたが,左肺動脈が低形成であったためにシャント装着は不可能と判断し,左肺動脈-左総頸動脈吻合術となっている.術後の経過は両者とも,長期にわたる人工呼吸器管理が必要であった.22q11.2欠失症候群に合併したMAPCAは早期治療が必要となる症例が多いことが推測され,その治療戦略は今後の発展が期待される.

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