III-P-30
当院で経験した肺動脈弁欠損
静岡県立こども病院循環器科1),静岡県立こども病院心臓血管外科2)
古田千左子1),原 茂登1),伴由布子1),満下紀恵1),金 成海1),田中靖彦1),小野安生1),坂本喜三郎2)

肺動脈弁欠損は比較的まれな疾患で,新生児期に呼吸障害を呈する症例は予後が悪いとされている.当院で1982~2005年に経験した肺動脈弁欠損の連続14症例について検討した.三尖弁閉鎖に伴う症例は除外した.性別は男児 9 例,女児 5 例,出生体重は1,918~3,577g(平均2,674g),出生前診断がされていた症例は 2 例であった.多呼吸や陥没呼吸の症状は 7 例が日齢 0 で出現し,日齢 2,生後 1 カ月,生後10カ月で出現したものがそれぞれ 1 例,日齢 0 で無呼吸発作がみられたものが 1 例,呼吸症状なしが 2 例であった.新生児期に人工換気を必要とした例は 8 例で,そのうち生存しているのは無呼吸発作のため 1 週間人工換気を施行した 1 例のみであった.生存は 6 例(最長24歳),死亡は 8 例で,生後12カ月未満が 7 例(うち 4 例が 1 週間未満)であった.ファロー四徴症を伴うのは13例で,全例外科治療を受けている.姑息術のみの 6 例はすべて死亡で,肺動脈閉鎖 + シャントが 2 例,肺動脈縫縮 + シャントが 2 例,肺動脈縫縮のみが 2 例であった.1 例は日齢 2 に姑息術(肺動脈閉鎖 + シャント)ののち12歳で心内修復術を受け,現在17歳で経過観察中である.6 例は心内修復術のみであった.心内修復術で肺動脈弁置換を受けたのは 1 例のみであるが,日齢 2 で死亡した.ファロー四徴を伴わない症例は 1 例で,呼吸障害を認めず外科的治療なしで経過観察中である.エコー所見における肺動脈狭窄や逆流の程度と予後との相関は見いだせなかった.【考察】肺動脈の拡張が著しく気道の圧迫が強く新生児期に人工換気を必要とするほどの呼吸障害を呈する症例は救命が困難であった.人工換気を必要としないまでも呼吸障害を呈する症例での外科的治療の時期,術式に関しては検討を要すると思われた.

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