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Kreutzer法による根治術を施行した肺動脈弁欠損を伴うファロー四徴症の 2 例
茨城県立こども病院心臓血管外科1),茨城県立こども病院小児科2)
坂有希子1),阿部正一1),五味聖吾1),菊地 斉2),塩野淳子2),磯部剛志2)

【はじめに】肺動脈弁欠損を伴うファロー四徴症(以下TOF/APV)では,著しく拡大した肺動脈による気道圧迫のため新生児期・乳児期に呼吸障害を発症することがある.肺動脈による気道への圧迫を減じる手段として,Kreutzer法(Kreutzer C, et al: Tetralogy of Fallot with absent pulmonary valve: A surgical technique for complete repair. J Thoracic Cardiovasc Surg 1990; 99: 192-194)に準じた根治術を施行した 2 例を経験したので報告する.【症例 1】在胎40w 2d,2,950g,Apgar 6/6 で出生の男児.出生直後よりチアノーゼと心雑音を認め,TOF/APVと診断し,人工呼吸器管理を要した.肺動脈は著しく拡大して,末梢肺動脈は発達不良であった.日齢13にKreutzer法による根治術を施行した.主気管支から末梢までの広範囲な気管支軟化症のため,人工呼吸器管理離脱までには術後14カ月を要した.気管切開・在宅酸素療法を必要としたが,呼吸器症状・気道病変は成長とともに改善傾向を認めた.【症例 2】胎児エコーでTOF/APVが疑われ,在胎41w 2d,2,875g,Apgar 8/8 で出生の女児.出生後TOF/APVと確定診断された.肺動脈拡張は著明で,これによる左右主気管支の圧排所見を認め,生後 1 カ月目に人工呼吸器管理を要した.この時点で右主気管支の完全閉塞を認め,生後 2 カ月でKreutzer法による根治術を施行した.術後 1 カ月で人工呼吸器管理から離脱可能となった.術後左右主気管支の軽度の圧排所見を認めたが,呼吸器症状は経過とともに改善傾向を認めた.【まとめ】Kreutzer法は,肺動脈壁の一部を切除・再縫合し,肺動脈径を減少させ気道への圧迫を減少させると同時に,主肺動脈前壁を前下方へ引き下ろすことで肺動脈による気管分岐部への圧迫を減ずる効果が期待される.本法は肺動脈拡張による外圧性の気道閉塞を解除するのに有効な手段であると考えられるが,末梢側の気道病変や気管支軟化症が強い症例には限界があると思われる.

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