III-P-36
Jatene術後に高度ARに対するAVRを施行した 1 例
静岡県立こども病院心臓血管外科
井出雄二郎,猪飼秋夫,藤本欣史,太田教隆,村田眞哉,中田朋宏,坂本喜三郎

【背景・目的】ASOの手術成績は安定してきたが,術後ARに対する手術介入については多くの問題が解決されていない.今回,DORV(T-B奇形,大血管関係はside-by-side)に対するoriginal Jatene術後高度ARに対するAVRを行う時に,若干の工夫を用いて良好な結果を得たので報告する.【症例】14歳,32kg男児.【現病歴】日齢 9;チアノーゼ,心雑音を指摘され当院へ搬送.DORV(T-B奇形)の診断となった.PA banding,ASD作成の先行手術後,2 歳 1 カ月時にoriginal Jatene手術 + VSD patch閉鎖を施行.冠動脈(Shaher 4 型)はmain trunk(RCA + LAD),LCXをそれぞれ新大動脈の前面・後面やや右側よりに移植.新主肺動脈とcentral PAの間はゼノメデイカロールを用いて再建した.術前エコー上PRはなかったが,術直後よりAR 2 度を認め,以後AR,TR,PSの増悪がみられ,再手術が必要となった.【手術と結果】大動脈にアプローチするために,前面を横走するゼノメデイカロールを処理する必要があった.そのためまず人工心肺下にゼノメデイカロールを切開し,背側のAAoを切断.ATS 21mmを使用しAVR試行.PAは後面を自己組織で,前面をゼノメデイカパッチで形成.AAoを直接再建すると,背側のPAが変形する可能性があったため人工血管のinterposeを行った.手術時間;11時間22分,体外循環時間;430分,大動脈遮断時間;180分であった.術後経過はおおむね良好で,術後 1 カ月後,内服加療目的に転科,その 2 カ月後に軽快退院となった.現在最終手術後約 4 年経過したが,学校管理区分は「D」,2 カ月に 1 度ワーファリンコントロール目的にて外来通院している.【考察・結語】年長時のASO術後AVRにて,「大動脈を完全に切断し,同上行大動脈を人工血管で延長する」術式を採用した.AVRを容易にし,肺動脈再建についても自己組織でより良い血流路を再建することができた.小さな手術ではないが,有効な術式と考えている.

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