III-P-37
大血管転換手術症例の検討
東京大学医学部胸部外科1),東京大学医学部小児科2),国立成育医療センター心臓血管外科3)
村上 新1),高岡哲弘1),土肥善郎1),益澤明広1),浦田雅弘1),小野 博2),杉村洋子2),渋谷和彦2),賀藤 均2),竹内 功3),高本眞一1)

【目的】大血管転位症(TGA)に対する大血管転換手術(ASO)を検討する.【対象】過去 3 年間にASOを施した11名.男女比 6:5,I型 8 例,II型 3 例(FTBH 1 例).手術時平均日齢10日(4~19日),体重2.6kg(2.1~3.1kg).冠動脈形態はShaher分類 1:8 例,2A:2 例,4:1 例.交連の不整列を 3 例に,有意な側副血管を 2 例に認めた.【手術方法】全例一期的ASOを施行,経食道超音波検査(TEE)を用いた.心筋保護液投与経路は初期では順行性,中期以降逆行性を主として用い,中期以降局所冷却にSt. Thomas液を使用.冠動脈はpunch-out holeへの移植を用いたが,現在trap doorを考慮.肺動脈再建には初期はグルタールアルデヒド処理自己心膜を,中期以降新鮮自己心膜を用いた.腹膜灌流カテーテルを 8 例に挿入.【結果】平均大動脈遮断時間129分.臨床的冠不全を認め,second pumpを要した 2 例はともにTEEで責任冠動脈を明らかとし,左冠動脈から起始する極めて細い右室枝の切離,新大動脈パッチ形成によりおのおの対応可能であった.周術期心筋梗塞,手術死亡,遠隔死亡を認めない.側腹血管の発達した 1 例で術後肺動脈狭窄を認め,他の 1 例で側腹血管に対するコイル塞栓術を要した.【結語・考察】現行の心筋保護法では,新生児開心術において 3 時間程度の心筋虚血が許容範囲と考えられた.局所冷却として用いたSt. Thomas液の心筋保護効果に関しては今後検討を要する.冠動脈移植法としてpunch-out法とtrap-doorの選択,肺動脈再建に用いる自己心膜処理に議論を残す.交連の不整列は軽度の場合冠動脈移植に影響を与えないが,側腹血行路が発達した症例では,術前塞栓,ベントサイズアップ等対応を要する.

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