III-P-38
大血管転位症のJatene手術後に体外循環に起因する肺硝子膜症を来した新生児例
新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸循環外科1),新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科2)
若林貴志1),渡辺 弘1),高橋 昌1),羽賀 学1),登坂有子1),白石修一1),林 純一1),鈴木 博2),長谷川聡2),朴 直樹2),沼野藤人2)

【はじめに】肺硝子膜症は新生児呼吸不全の原因となるが,体外循環が肺硝子膜症を惹起した報告は少ない.われわれは大血管転位症(TGA)のJatene術後に高度の呼吸不全を来し,剖検で肺硝子膜症が原因と判明した新生児例を経験したので報告する.【症例】在胎38週,体重2,768g,帝王切開で出生.出生直後からチアノーゼがあり,TGAと診断された.PGE1持続静注による呼吸抑制のため,人工呼吸管理を行ったが,肺酸素化能に異常を認めなかった.日齢11日にJatene手術を施行,大動脈遮断時間 1 時間49分,体外循環時間 4 時間18分であった.術後 2 日間は心不全があり,腎不全に対して腹膜透析を行ったが,術後第 2 病日より循環動態は安定した.体外循環離脱後に低酸素血症があり,ICU入室時のBGAは(FiO2 1.0)PCO2:21,PO2:170mmHgであった.術後第 3 病日より経皮的酸素飽和度(SPO2)の低下が続くようになり,急性肺障害と診断して術後第 6 病日よりシベレスタットとステロイドの投与を行ったが,低酸素血症は改善しなかった.胸部X線写真では浸潤影は軽度であった.術後第 8 病日に施行した胸部CTでは肺門以外の胸膜下中心にびまん性のすりガラス陰影が広がっていた.低酸素血症が進行するとともに,PCO2:60mmHg前後の高炭酸ガス血症を来したため,人工呼吸をHFO(高頻度振動換気法)に変更した.PCO2は40mmHg台に改善したが,低酸素血症は改善しなかった.胸部X線ですりガラス陰影が著明になり,低酸素血症のために術後第10病日に死亡した.病理解剖結果では,両肺の肺胞道内腔にびまん性の硝子膜の付着があり,肺硝子膜症による肺胞虚脱状態と診断された.肺炎の所見はなかった.新生児肺硝子膜症による換気不全が低酸素血症の原因と考えられた.【結論】新生児の体外循環後の呼吸不全の原因として,肺硝子膜症である可能性がある.低酸素血症は高度で進行性経過をたどった.胸部CTでは特異的なすりガラス陰影を呈していた.

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