III-P-40
心耳並列を合併した完全大血管転位症の外科治療
新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸循環外科1),新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科2)
高橋 昌1),渡辺 弘1),羽賀 学1),白石修一1),登坂有子1),若林貴志1),林 純一1),鈴木 博2),長谷川聡2),朴 直樹2),沼野藤人2)

【背景】心耳並列(juxtaposition of the atrial appendages:JAA),とりわけ右側心耳並列(RJAA)は極めてまれな先天性心奇形であり,その多くは三尖弁の構造異常や両大血管右室起始(DORV)など多彩な先天性心疾患に合併すると報告されている.今回,われわれはRJAAを伴う 2 型完全大血管転位症(TGA)を経験したので報告する.【症例】女児,在胎39週,3,210grにて出生.出生直後よりチアノーゼ認め,日齢 0,近医より当院NICU搬入.入院直後の心エコーでDORV(non committed VSD),mild PS,TGA,PDA,RAAと診断され,日齢 6 に心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈はShaher type 1.その後の心エコー所見と合わせ,最終的にはTGA(2 型)と診断した.日齢19にatrial switch operation(ASO)を施行した.術中,右房切開して右心房を観察したところ,一見すると心房中隔欠損と思われるような深いくぼみが認められ,その先端は左心耳であり,この時点でRJAAと診断した.経三尖弁的に心室中隔欠損孔(VSD)を観察すると,大動脈弁の方向は左室に向かっているが,その起始は右心室とも考えられた.その他の構造異常は認められず,VSDを閉鎖したのちにASOを施行した.術後経過は順調で,31病日退院した.【考察】本症例は当初よりASOの予定であり,RJAAが術式・予後に影響を与えたとは考えていないが,心房内転換手術やFontan candidateの際には,心耳並列はその術式に直接影響を及ぼす.また,房室弁や大血管の起始異常を合併する場合が多く,術中にはそれらに配慮した対応を要する.本症例では大動脈と中隔の特徴的なmalaligmentが認められ,術中に難渋した.【結語】JAAはまれな疾患ではあるが,術式に影響を及ぼす場合があり,その存在を念頭においた術前診断が必要と考えられた.

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