III-P-44
右側開胸アプローチでのone and a half ventricular repairの経験
豊橋市民病院心臓血管・呼吸器外科1),豊橋市民病院小児科2)
村山弘臣1),渡邊 孝1),矢野 隆1),木田直樹1),波多野友紀1),大原啓示1),小林淳剛1),安田和志2),野村孝泰2)

【はじめに】胸骨正中切開によるアプローチが困難な症例に対して,右側開胸アプローチでone and a half ventricular repair(1.5心室修復術)を施行し,良好な結果を得た.【症例】症例は 6 歳,女児.純型肺動脈閉鎖(PA/IVS)に対して,新生児期にBrock手術,右Blalock-Taussig短絡手術変法が順次施行された.2 歳時,右室流出路交通を残しての両方向性Glenn手術後,MRSAによる胸骨骨髄炎を合併した.骨髄炎に対して何度か掻爬形成手術が施行されたが,感染は完治せず,そのため機能的根治術の実施を躊躇されていた.そこで,5 歳時,形成外科の協力を得て,胸骨骨髄炎手術を施行した.その後,6 カ月間骨髄炎の再発を認めないことを確認して,1.5心室修復術を施行した.この時の心臓への到達法としては,胸骨正中切開を避け,右側開胸アプローチを選択した.手術は第 4 肋間開胸で入り,体外循環,心停止下に心房中隔欠損閉鎖,上大静脈-肺動脈吻合を行った.FiO2 = 1.0,SVC = 11mmHg,IVC = 13mmHgで,SpO2 = 95%を得られ,体外循環からの離脱が可能であった.術後約 6 時間で抜管し,その後の経過も良好であった.【考察】先天性心疾患の児を管理していくうえで,根治術に到達するまでの間に何度か姑息手術を必要とする症例も多い.こうした症例が胸骨骨髄炎を合併した場合,以降,同一アプローチでの再手術が躊躇されることがある.また,1.5心室修復術は,Fontan型手術と並んで,肺循環を静脈圧に依存する要素を持つ.一方で,側開胸手術は,肺を圧排して手術を行わなければならず,換気血流比の不均衡分布や,機械的な肺損傷などが懸念される.こうしたなか,本症例は,右側開胸から1.5心室修復術を行い,良好な結果を得ることができた.手術適応を慎重に判断することによって,本術式は,右側開胸アプローチでも安全に行い得るものと考えられた.

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