III-P-45
両大血管右室起始症,肺動脈狭窄,下大静脈欠損,azygos connection,heterotaxyに対して施行したFontan型手術後に肝静脈吻合のみをtake downした 1 例
弘前大学医学部呼吸器心臓血管外科1),弘前大学医学部小児科2)
大徳和之1),鈴木保之1),福井康三1),福田幾夫1),江渡修司2),大谷勝記2),佐藤 工2),高橋 徹2),米坂 勧2)

無脾症候群患児において,術前PA indexなど肺動脈条件が整っていたとしてFontan型手術を行ったが循環に順応できず肝静脈吻合のみtake downした症例を経験した.症例は 9 歳女児.術前診断は両大血管右室起始症(DORV),肺動脈狭窄(PS),動脈管開存症(PDA),心房中隔欠損症(ASD),右大動脈弓(RAA),下大静脈欠損,azygos connection,heterotaxy.1996年10月在胎39週 4 日出生.1997年 2 月左BT shunt.当初はbiventricular repairを考慮していたが左心室の発達が不良でありFontan循環を目指すこととした.2005年 8 月心臓カテーテル検査で平均肺動脈圧14mmHg,肺血管抵抗値1.36単位,PA index 350と肺動脈条件が整っており房室弁逆流が軽度としてTCPCを行った.左上大静脈が遺残し,右上大静脈は欠損していた.奇静脈はRAAの右を通り,胸腔内で椎体を越え左側を走行し左上大静脈に結合,肝静脈は 3 本が右房へと還流していた.体外循環を使用し拍動下で左上大静脈を左肺動脈に吻合した.肝静脈は奇静脈へ直接吻合する予定であった.OPCAB用の吸引型ハートポジショナーを使用し心尖部を脱転した状態で奇静脈を検索したが同定できず,肝静脈と奇静脈は10mm ePTFEグラフトを介して比較的高位で吻合した.人工心肺離脱時CVP 18mmHgであり手術終了時も同様であった.ICU入室後しばらくの間は循環が安定していたが徐々に低下,カテコラミンの増量や輸血,NO吸入等で対処したが循環虚脱となり補助循環を必要とした.第 1 病日に肝静脈のみをtake downしたところ循環が改善したため再び補助循環下の管理を行った.第 8 病日には補助循環を離脱,第29病日にはCHDFを離脱することができた.本症例のごとく術前の肺動脈条件がFontan循環の適応基準に見合っていたとしても無脾症候群患児では適応しきれないこともあり 2 期的手術が望ましいと思われた.また,今回循環が成立しなかった原因としては肝静脈や門脈系の発達不全があるのではないかと思われた.

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