III-P-46
胎生後期の高濃度エピネフリン負荷の影響
聖隷浜松病院小児循環器科1),東京女子医科大学循環器小児科2)
中嶌八隅1),富田幸子2),中澤 誠2)

【背景と目的】近年,成人期に達した低出生体重児において,冠動脈疾患,高血圧などの循環器疾患の発生率が高いことが報告されている.胎児期の発育遅延が,生涯にわたり,個体に影響を及ぼすことが示唆される.今回われわれは,胎生後期の鶏胚にストレス負荷を行い,それにより生じる心血管系の影響を検討した.【方法】胎生期のストレスの再現として,ノルエピネフリンを鶏胚に投与した.卵殻の一部を除去し,胎生11~15日にノルエピネフリン0.5mlを連日滴下した.濃度は10-6mol,10-5molの 2 群とし,コントロール群には生理食塩水を投与した.胎生19日,血液を採取し,心臓,肺を摘出した.血液からエピネフリン,ノルエピネフリン,ドパミン血中濃度を測定した.心臓は右心室自由壁と左心室 + 中隔に分割し,重量を測定した.肺組織はヘマトキシリン・エオジン染色,ファンギゾン染色を行い,中膜径/血管径比を計測した.【成績】体重はコントロール群19.8g,10-61mol群18.8g,10-5mol群19.5gと有意差はなかった.カテコラミン血中濃度はエピネフリン,ドパミンでは各群に有意差はなかったが,ノルエピネフリンではコントロール群2,887pg/ml,10-6mol群4,235pg/ml,10-5mol群4,266pg/mlと投与群で増加していた(p < 0.05).右室/左室 + 中隔比ではコントロール群0.37,10-6mol群0.44,10-5mol群0.46と投与群で右心室重量が増加していた(p < 0.05).肺内小動脈での中膜/血管径比はコントロール群0.39,10-6mol群0.49,10-5mol群0.49と,投与群で増加していた(p < 0.05).【結論】胎生後期に高濃度エピネフリンを負荷することで,右心室壁の肥厚と,肺小動脈での血管壁の肥厚が確認された.

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