III-P-47
新生時期胸腺摘除が免疫形成に与える影響
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部器官病態修復医学講座循環機能制御外科学1),国立病院機構香川小児病院2),愛媛県立中央病院心臓血管外科3),徳島大学ゲノム機能研究センター遺伝子実験施設4)
黒部裕嗣1),富永崇司2),来島敦史1),加納正志1),北市 隆1),江川善康2),長嶋光樹3),増田 裕1),高濱洋介4),北川哲也1)

【背景】新生児期の心奇形に対する外科的治療時には,やむを得ず胸腺を摘除し,安全な手術視野を確保したうえで,心内操作をすることがある.しかし,現在まで新生時期に胸腺を摘除することにより,その後の発育,とりわけ胸腺摘除が免疫機能発達に及ぼす影響について報告されていない.【目的】胸腺摘除後の免疫発育動態を明らかにし,摘除が及ぼす影響について検討する.【方法】本研究は2005年より徳島大学・香川小児病院・愛媛県立中央病院の 3 施設で行われており,3 カ月齢以下の心臓手術時に胸腺全摘または部分摘出をする症齢を対象とした.現在までに21例の参加があり,全摘群 6 例/部分摘出群15例である.手術時および術後 6 カ月ごとの 3 年間,血液検査と観察期間中の感染性疾患罹患の有無について聴取を行う.血液検査は,全血検査・分類のほかに,細胞表面マーカーを用いた細胞分類を行った.具体的には,CD-3/-4/-8/-19陽性細胞数を調べ解析した.【結果】現時点では 6 カ月までの追跡調査を解析した.術後重症感染症に罹患した患児はいなかった.6 カ月後での白血球数・リンパ球数は,部分摘除群で術時より増加傾向を示すのに対し,全摘群では低下した.また,細胞性免疫細胞を示すCD-3,-4 or -8 陽性細胞数は部分摘除群で増加傾向を示すのに対して,全摘群では低下しており,両群間には有意差を認めた.液性免疫を示すCD-19陽性細胞数は両群間に差を認めなかった.【結論】以上の結果より,胸腺全摘により術後の細胞性免疫機能発達に重大な影響を及ぼすことが示された.手術操作上やむを得ないとはいえ,一部でも胸腺を温存することが重要であると考えられた.

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