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小児先天性心疾患における心筋細胞のapoptosis(その 1)―剖検例における心筋apoptosis後の幹細胞の動員と心筋再生(第 3 報)―
友仁山崎病院1),京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学2)
佐藤 恒1),白石 公2),浜岡建城2)

【背景,目的】成人の虚血性心疾患や拡張型心筋症における心筋リモデリングの過程は,apoptosisによる心筋細胞の脱落,残存心筋の代償性肥大,線維化が特徴とされている.さらには少数の幹細胞の動員と心筋細胞の再生が起こることも近年明らかになってきた.しかし小児期の心筋リモデリング過程の詳細は明らかでなく,apoptosis,心筋細胞の肥大,線維化,心筋細胞の再生などについての詳細は明らかでない.これまでわれわれは剖検例の検討から,先天性心疾患では心筋細胞のapoptosisおよびc-kit陽性幹細胞が対照小児に比べて有意に高率であること,および両者の陽性率は相関することを報告してきた.今回は剖検心での線維化や心筋細胞の肥大を検討するとともに,動員された幹細胞のマーカー検索を行ったので報告する.【方法】(1)先天性心疾患の小児剖検例17例,対照小児 6 例,成人心疾患 7 例について,Masson染色による線維化の定量および心筋細胞径の計測を行った.(2)先天性心疾患症例に対し,c-kitと白血球マーカーであるCD45,心筋特異的転写因子であるGATA4 による二重免疫染色を行った.【結果】(1)先天性心疾患症例では小児対照に比べて心筋細胞径には有意差は認められなかった(7.30 ± 1.21mm versus 8.48 ± 2.07mm).線維化率にも有意差はみられなかった(1.56 ± 0.56% versus 2.03 ± 1.90%).c-kit陽性細胞にはCD45陽性細胞と陰性細胞混在し,c-kit陽性細胞のなかにはGATA4 陽性の心筋幹細胞も存在した.【結論】小児先天性心疾患では線維化や心筋肥大などの成人心疾患に特徴的なリモデリング過程はみられず,幹細胞による心筋細胞の再生が成人よりも高率に起こっている可能性が示唆された.小児先天性心疾患にみられたc-kit陽性細胞のなかには,造血幹細胞以外の心臓固有の幹細胞が存在する可能性が示唆された.

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