III-P-50
経母体的グルココルチコイド投与によって変化した胎児および新生児ラットの心臓機能関連蛋白の同定
聖マリアンナ医科大学薬理学1),聖マリアンナ医科大学小児科学2)
都築慶光1,2),熊井俊夫1),武半優子1),麻生健太郎2),松本直樹1),小林真一1)

【目的】出産前に母体にグルココルチコイド(以下GC)を投与すると,未熟児の呼吸窮迫症候群等さまざまな急性期疾患を減少させ,新生児の死亡率が低下すると報告されている.経母体的GC投与による心臓機能関連蛋白への影響を明らかにするために,妊娠ラットにデキサメサゾン(以下DEX)を投与し,心臓中で変化する蛋白を,プロテオーム解析で網羅的に解析した.【方法】Wistarラットに,出産 2 日前からDEX(1mg/kg/day)を 2 日間皮下投与し自然分娩させた日齢 1 のラットを新生児群,妊娠19,21日目に同様にDEXを 2 日間投与し帝王切開させたラットを胎児群とした.それぞれの群をさらにDEX投与群と非投与群とに分け心筋から総蛋白を抽出し,二次元電気泳動を行い,蛋白質の発現の違いを解析後,質量分析計により蛋白を同定した.【結果】(1)日齢 1 の新生児群においてDEX投与群では非投与群と比較し,蛋白発現量が顕著に増加したスポットが検出された.(2)非投与群の胎児群と新生児群の蛋白発現パターンを経時的に比較すると,蛋白発現が増加しているスポットがみられた.(3)非投与群における経時的変化とDEX投与で増加した共通のスポットが 5 つ検出され,そのスポットについて質量解析をした結果,これらはα-enolase,CK-M type,β-tubulin,troponin T,ATP synthase β鎖と同定された.【考案】今回の結果から,経母体的にDEXを投与すると,胎児および新生児のある種の心臓機能関連蛋白の発現が増加することが示唆された.そのなかでα-enolaseはおもに心筋に分布している解糖系酵素で,妊娠経過とともに心筋の解糖系が活性化することが知られている.このことよりDEX投与によりα-enolaseが増加し出生後の児の循環動態に影響を及ぼす可能性が示唆された.

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