III-P-52
先天性心疾患乳児の甲状腺機能についての検討
新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野1),新潟青陵大学看護福祉心理学部看護看護科2)
鈴木 博1),長谷川聡1),朴 直樹1),沼野藤人1),渡辺健一1),浅見 直2),内山 聖1)

【背景】心不全患者で甲状腺機能異常を高頻度に認めると報告されているが,小児期の報告は少ない.【目的】心不全症状を呈した肺血流増加型先天性心疾患乳児において,(1)甲状腺機能異常の頻度をDown症候群児(D群)と非Down症候群児(N群)に分けて検討する.(2)心血行動態と甲状腺機能の関連を検討する.【対象】心カテ目的で当科に入院した肺血流増加型先天性心疾患乳児.D群 7 例(月齢 4~13カ月,男 4 例,女 3 例,VSD 5 例,CAVC 2 例).N群19例(月齢 5~11カ月,男 4 例,女 3 例,VSD 11例,CAVC 1 例,ASD 1 例).【方法】心カテ前日に甲状腺機能(TSH,fT4,fT3)を測定.心カテでは心拍数,肺体血流比,肺血管抵抗,体血管抵抗,心係数,左室拡張末期容量,右室拡張末期容量,平均主肺動脈圧,平均大動脈圧を測定した.【結果】D群とN群の比較では日齢と体重に有意差はなく,身長はN群が有意に高かった.心カテ結果では 2 群間に有意差はなかった.D群では 7 例中 2 例(28.6%)がTSH高値(> 6μIU/ml),fT4,fT3 正常でsubclinical hypothyroidism(SHT)と診断された.N群では19例中 3 例(15.7%)がSHTであった.TSHと日齢は,全体で検討すると正相関(r = 0.486,p = 0.01)を示し,N群のみでも(r = 0.631,p < 0.01)の正相関を示した.甲状腺機能正常群とSHT群の比較では,SHT群は有意に年齢と平均大動脈圧が有意に高かった.【結語】D群のSHTの頻度は,Down症候群を対象とした今までの報告と同程度であった.N群ではSHTが一般乳児と比し高頻度であった.TSHと日齢に正の相関がみられ,長期の心不全状態が甲状腺機能異常を引き起こす可能性が示唆された.今回の研究では甲状腺機能異常と血行動態の関連は不明であった.

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